研究課題/領域番号 |
18K01532
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
田中 啓太 尚美学園大学, 総合政策学部, 講師(移行) (50648095)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | L. ロビンズ / P. H. ウィックスティード / 経済学史 |
研究実績の概要 |
本年度は、L. ロビンズの『経済学の本質と意義』に展開された個人行動のモデルとL. v. ミーゼスおよびP. H. ウィックスティードとの共通点を、彼らの合理的経済人に対する批判的な観点から研究した。また松嶋敦茂による「近代的パラダイム」の観点を踏まえて、限界革命を担ったW. S. ジェヴォンズから始まり、A. マーシャル、ウィックスティード、ロビンズへ至る選択理論としてのイギリス経済学史の一面を、選択の合理性を巡る議論に着目して研究した。 先行研究で示されたロビンズ像と異なり、本研究が明らかにするロビンズの選択行為の類型は、合理的経済人の形式で示される完全な合理性だけではなく目的選択おいて矛盾を含むような限定的な合理性をも考慮する形で、より多様な人間行動を経済学の研究対象に定めようとする。そこで、「近代的パラダイム」の枠組みにとらわれない観点に着目することで、ロビンズの経済学方法論の射程の広さが、それまでの選択理論としての経済学の系譜にも見られることを指摘した。 以上の研究内容を一次資料から検討するために、2019年2月17日から3月2日までLSE(イギリス、ロンドン)を訪問し、LSE Archivesにおいてロビンズの草稿資料の収集を行った。収集することができた資料は膨大なロビンズ・コレクションの極一部であるが、ロビンズとミーゼスとの書簡や未発表の草稿、ウィックスティードの草稿などから本研究が提示するロビンズの特徴を明らかにすることが出来ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究が提示するロビンズの特徴について論文1件、共著書1件を発表し、LSEにおける資料収集も行ったことで当初予定していた以上の研究成果を出すことが出来た。その反面、国内で予定していた資料収集を行うことが出来なかった。この理由は、勤務校における学内業務の都合上、国内の資料収集に長期間日程を割くことが困難であったためである。資料収集に未達成な部分もあるが、基礎的な研究成果をまとめて発表することが予定していた以上に達成できたため、本研究課題は総合的に順調に進んでいると考えられる。 なお本年度で遂行できなかった国内の資料収集は次年度に繰り越して実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、本年度末に収集した一次資料を検討し、その研究成果を現在執筆中の論文として発表する。これまでロビンズとパレートは、同じ選択理論としての経済学の系譜に位置付けられてきたが、本研究課題の観点からはロビンズとパレートの相違点を指摘することが出来る。また前年度に実施できなかった国内資料収集および前年度から引き続きLSEでの海外資料収集を行い、本研究課題を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施できなかった国内における資料収集を次年度に延期したために、主に国内旅費および資料収集における複写費が次年度使用額として生じている。国内資料収集が実施できなかった理由は勤務校における学内業務との調整が難しかったためである。本年度は本研究課題の初年度にあたるが、本年度(2018年度)に催されるオープンキャンパス担当等の学内業務日程はその前年度(2017年度)までに概ね決定しているため、本研究課題の採択を受けた以後の調整が困難であった。なお次年度においては、この国内資料収集を実施すべく学内業務日程を調整済みである。 このように、本年度実施できなかった国内資料収集に関わる旅費および複写費は次年度の計画と合わせて使用される。
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