ロビンズは人間行動の合理性と非合理性を巡る観点を経済学方法論として明示していた。このことは、主流派経済学の方法論的基礎としての一面的なロビンズ像を修正し、その後の行動経済学につながる経済学者として位置付けることができる。また、20世紀初頭までのイギリス経済学にも同様に行動の非合理性についての観点が存在する。本研究によって、限界革命以降の近代経済学の発展には合理的経済人モデルを超えるより広い合理性の枠組みが存在しており、実証科学としての経済学の歴史整理に埋没している経済観の重層性に改めて着目しながら近代経済学史を捉えなおす必要について示唆することができる。
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