研究課題/領域番号 |
18K01537
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研究機関 | 九州国際大学 |
研究代表者 |
山口 秋義 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 教授 (80269026)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統計史 / 統計制度 / 統計調査 / ロシア経済史 / 社会思想史 |
研究実績の概要 |
ロシア革命直後の1918年にソヴィエト政権によって創設された中央統計局は世界初の集中型統計組織であった。政府統計制度の集中型と分散型との長短に関する論議は西欧諸国において統計調査が活発となった19世紀半ばから今日まで続く論点である。ソヴィエト政権下における集中型統計組織の創設は西欧における統計論議を継承したものであった。集中型または中央統計局型統計組織を目指した統計改革は帝政末期のロシアにおいて3度試みられている。このうち1908年と1910年の統計法案は二院制を構成する一方の議会は通過したもののもうひとつの議会において廃案となっている。また1916年に作成された法案は1917年に帝政が崩壊する中で国会審議に付されることがなかった。帝政期における中央統計局構想は西欧統計論議の反映でありのちのソヴィエト政権下の中央統計局を準備したものとして位置づけられる。なかでも万国統計会議における論議と帝政下の統計改革との紐帯を明らかにすることがこの研究のかだいである。2018年度は、3つの統計法案のう1908年にロシア帝国内務省中央統計委員会が国会へ提出し1910年に廃案となった統計法案と、万国統計会議を中心に交わされた西欧諸国における政府統計制度論議との関係を明らかにすることに取り組んだ。ロシア国立歴史公文書館所蔵の統計行政資料のうち国会審議議事録など法案作成に関わる資料を閲覧し複写し解読する作業を続けた。当該法案が中央統計局型制度の設置を目指したものであり、万国統計会議のうち特に1967年フローレンス大会の影響を強く受けたものであることが明らかとなった。この研究成果は九州国際大学現代ビジネス学会『九州国際大学国際・経済論集』第4号(2019年8月20日発行)に掲載される予定である。また万国統計会議フローレンス大会報告論集の原本が京都大学に所蔵されていることを知り、閲覧のうえ複写を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果は九州国際大学現代ビジネス学会『九州国際大学国際・経済論集』第4号(2019年8月20日発行)に掲載される予定であるが、当初予定していたロシア語論文の投稿には至っていない。2019年前半に原稿を完成させ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1908年統計法案が国会審議において廃案となった根拠のひとつとして公的統計の独立性の問題があった。この論点を中心としたロシア語論文をロシア国家統計局『統計の諸問題』誌へ2019年前半に投稿する。この作業と並行して、廃案となった1908年統計法案のあとに1910年再び国会へ提出された統計法案の作成と国会審議に関する資料をロシア国立歴史公文書館において調査し複写し解読する作業を進める。その上で1910年統計法案に関する論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学図書館マイヤー文庫に所蔵されている万国統計会議報告論集と決議集の複写代金を依頼したところ、見積額が138,326円となり2018年度予算では足りないことが分かりました。2019年度予算だけでこの費用を賄うと他の予定支出が制約されることが予想されます。したがって上記の次年度使用額を設定することとしました。
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