研究課題/領域番号 |
18K01538
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大久保 正勝 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30334600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モデル不確実性 / 景気循環のコスト |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは、米国の複数の研究者によって提示された「非常に小さな景気循環のコスト」に対する否定的な見解を米国以外のデータを用いて再検証し、さらに複数の国際データを用いることで他国への適用可能性を明らかにすることであった。本研究の1年目である平成30年度は、この目的を達成するために大きく分けて3つのことを行った。第1に、モデル不確実性を考慮した場合の景気循環の厚生費用を計算する方法を検討した。具体的には、Barillas et al.(2009, Journal of Economic Theory)で示された厚生費用の尺度が消費がトレンド定常過程に従う場合にdetection error probabilityの累積分布関数の逆関数を用いて解析的に表現できること、また、その解析的表現をもとに厚生費用の標準誤差を計算できることを確認した。第2に、Ellison and Sargent (2015, American Economic Journal: Macroeconomics)で示された厚生費用の尺度の一部が解析的に表現できること、また、その解析的表現をもとに彼らの結果を再現できることを確認した。これにより、上記の2つの論文で提案された2種類の尺度が解析的に比較可能となった。第3に、国際比較分析に用いる2種類のデータセットを新たに作成した。一つは、国際通貨基金(IMF)のInternational Financial Statisticsを主なソースとした四半期のデータセットであり、もう一つは、世界銀行のWorld Development Indicatorsに基づいた年次のデータセットである。いずれも作成時点で入手可能な直近の期間までアップデートした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
厚生費用の計算方法の精緻化と簡素化は、研究計画において予定していた初年度の検討分を完了した。また、実証分析に必要なデータセットの作成も行った。以上から、概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確認した厚生費用の尺度の計算手法と作成したデータセットを用いて実証分析を進めるとともに、文献調査を並行して行う。また、引き続き、分析手法の精査を行い、他の研究者からのアドバイスなどを取り入れながら、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の計画段階では、学会参加に伴う旅費と参加費を計上していたが、研究の進展に伴い、次年度以降に学会や研究会へ参加するほうが、より効率的に研究が進められると判断した。したがって、次年度使用額は学会や研究会への参加に伴う旅費や参加費に充てる予定である。残額が生じた場合は、研究助言の機会を設ける手段としてセミナー等を開催し、その際の研究者の招へい費用に充てる予定である。
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