研究課題/領域番号 |
18K01540
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
久保庭 眞彰 一橋大学, 名誉教授 (70111698)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロシア / 大規模産業連関表 / 国際産業連関表 / 付加価値貿易 / グローバル経済 / 垂直分業 / グローバルバリューチェーン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1) 2017年に統計局web上で約20年振りに公表されたロシアの2011年ベンチマーク大規模産業連関表と2012-2015年延長表の画期性について詳細な検討を行い,同時に石油・ガス産業等や価格表示について補正を行った代替的な組換え産業連関表を初めて提示し,軍事産業の分析も行う,(2)新規産業連関表を126部門,59部門,30部門,1部門レベルで利用し,ロシア国内産業構造を基本価格表示と生産者価格表示にわたり,詳細に分析する,(3)さらに,新規産業連関表を国際産業連関表の中に組み込み,グローバルサプライ・バリューチェーンの現状と発展可能性について,EU,中国,日本,米国,近隣旧ソ連同盟国(カザフスタン,ベラルーシ等)・非同盟国(ウクライナ)との相互依存関係(スピルオーバー効果,依存関係)や独自の付加価値貿易の分析により明らかにすることである. 2018年度は,計画通りに,ロシア統計局でのヒアリングを行い,新規産業連関表の画期性を部門分類やSNAの観点から従来の産業連関表との比較において明らかにした.ロシア1国については,産出・付加価値構造,最終需要項目別構造,各部門の前方・後方リンケージ,輸出の付加価値誘発(国内付加価値),輸出の中間財輸入誘発(外国付加価値の源泉)等について詳細に分析する.特に輸入中間財(輸出中間財)と輸入最終財(輸出最終財)の部門別依存関係の分析により,ロシア経済構造の現状と特徴を検出した.石油・ガス部門の輸出税,輸出商業マージンを石油・ガス付加価値(税抜きの基本価格)に加えて,石油・ガス部門の生産と貿易を統合し,石油・ガス部門の生み出すGDP(市場価格)を再計測した.分析結果は国内学会で報告し,台湾の大学講演やポーランド国際会議での講演を通じて海外発信した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従い,現地調査等を行い,新規産業連関表の画期性を部門分類やSNAの観点から従来の産業連関表との比較において明らかにすることができた.ロシア1国については,産出・付加価値構造,最終需要項目別構造,各部門の前方・後方リンケージ,輸出の付加価値誘発(国内付加価値),輸出の中間財輸入誘発(外国付加価値の源泉)等について詳細に分析した.特に輸入中間財(輸出中間財)と輸入最終財(輸出最終財)の部門別依存関係の分析により,ロシア経済構造の現状と特徴を検出した.石油・ガス部門の輸出税,輸出商業マージンを石油・ガス付加価値(税抜きの基本価格)に加えて,石油・ガス部門の生産と貿易を統合し,石油・ガス部門の生み出すGDP(市場価格)を再計測した.石油・ガス以外についても,供給表と純生産物表を利用して,基本価格表を生産者価格表に組換え,中国,日本,米国との比較研究を共通価格表示のもとで実施する準備を整えた.以上のように石油ガス部門を組み替えた産業連関分析を行い,輸出の付加価値誘発と輸入誘発を再計算しえた.石油・ガス以外のロシアの重要部門であり,最近の景気後退をチェックする機能を果たした軍事産業にも着目した産業連関分析を実施する.1国表による垂直分業の産業連関分析に続き,ロシア産業連関表の国際産業連関表への新たな組み込みによるグローバル・バリューチェーン(GVC)の分析を試験的に実施した.
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今後の研究の推進方策 |
1国表による垂直分業の産業連関分析については,引き続き,2011-2015年を対象とした系統的分析を試みる.ロシア産業連関表の国際産業連関表への新たな組み込みによるグローバル・バリューチェーン(GVC)の分析を本格的に実施する.分析枠組みは研究代表者による統一的理論枠組みを利用する.石油・ガス輸出については,FOB価格に対応する購入者価格(輸出税・商業マージン込み)表示データを用いる.ロシアの各国別・各部門別輸出・輸入については,OECD等を参考とするが,国連コモ貿易データやロシア関税統計を利用して独自に再構築する.特にロシアの各国別ガス輸出金額の推計に重点を置く. 以上の研究成果をとりまとめ,邦文・英文論文を公表し,さらに内外でのチュートリアルセミナーと国内・国際会議での報告により,研究成果の社会還元と情報発信を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費を節約すると同時に海外調査費用が他機関から支給されたため次年度使用額が生じた.次年度使用額は令和1年度計画の海外調査・国際発信のための旅費等に有効に活用する予定である.
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