研究課題/領域番号 |
18K01541
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松下 幸敏 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50593589)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経験尤度法 / セミパラメトリックモデル / 高頻度データ |
研究実績の概要 |
第一に、セミパラメトリック・モーメント条件モデルのJackknife Empirical Likelihoodによる統計的推測法を提案する論文を執筆・改訂した。本論文では、一般のセミパラメトリック・モーメント条件モデルにおいてJackknife法と経験尤度を用いた統計的推測法(Jackknife empirical likelihood法)を提案した後、いくつかのモデルにおいてnonstandard asymptoticsにおける理論的性質を導出し、またその修正法も提案した。具体例として、加重平均限界効果の推定、多操作変数の場合の操作変数モデル、多説明変数の場合の線形回帰モデルを扱い、提案した手法の有用性を示した。この結果は、最終的な確認と修正を行った後、学術誌に投稿予定である。 第二に、「生成された独立変数」を含むセミパラメトリックモデルの統計的推測法を提案した論文を改訂した。具体的な改訂内容は、(i)推定法をより一般的なクラスに拡張したこと、(ii)提案した手法が部分パラメータの 統計的推測にまで適用可能であることを示したこと、(iii)その有限標本性質を数値実験によって検討したことである。この結果は、学会誌に再投稿中である。 第三に、高頻度データの経験尤度法による統計的推測法を提案した論文を改訂した。本改訂では、論文の構成を大幅に見直し、数値実験によってより広範囲の手法との有限標本性質の比較を行った。この結果は、Journal of Business and Economic Statisticsに掲載決定した。 第四に、日本の戦前期の水道普及が致死率にもたらした影響をセミパラメトリックモデルを用いて分析した。この結果は、Economics and Human Biologyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セミパラメトリックモデルにおける統計的推測法の一般化に向けて一定の成果を挙げることができた。いくつかのセミパラメトリックモデルにおいて、より有用な推測法を開発し、その理論的正当化を行った。同時に数値実験によって有限標本における性質も検討し、従来の手法に対する優越性を示した。 これらの結果は、次年度以降、大規模・高次元計量モデルの統計的推測法を開発する際に、重要な一部分となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、現在投稿中および投稿予定の論文がそれぞれ学術誌に受理されるように改訂を進める。学会誌の審査結果による部分も大きいが、具体的には、(i)「生成された独立変数」を含むセミパラメトリックモデルの統計的推測法の論文、(ii)Jackknife Empirical Likelihoodによる統計的推測法の論文の両方について、提案した手法の理論的・実用的有用性の議論をできるかぎり精緻化させたいと考えている。 第二に、これまでに得られた結果を拡張し、大規模・高次元計量モデルの統計的推測法の開発を行う。これまでセミ・ノンパラメトリックモデルにおいて得られた結果は、大規模・高次元計量モデルの統計的推測と密接に関係している。具体的には、セミパラメトリックモデルに含まれているノンパラトリックな部分を高次元データに適した手法で推定する手法を提案し、その理論的正当性を議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度は統計的推測法の開発と理論的性質の研究に予定よりも多くの時間がかかり、新たな研究成果の発表にまで至らなかった。そのため数値実験については予定よりも計算負荷が軽くなったため、新たな計算機の購入の必要がなかった。
(使用計画)現在新たに着手している研究において、数値実験が必要であり、その費用に充てたい。また、共同研究者との研究打ち合わせ及び海外学会における研究発表のための費用に充てたい。
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