研究課題/領域番号 |
18K01544
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
根本 二郎 名古屋大学, アジア共創教育研究機構(経済), 教授 (20180705)
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研究分担者 |
後藤 美香 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50371208)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幸福度指標 / 環境指標 / GDP代替指標 / データ包絡分析 |
研究実績の概要 |
本研究は持続可能性要因と幸福度要因を考慮した新しいGDPの代替指標を作ることが最終的な目的である。そのためのフレームワークとして、複数のインプットから複数のアウトプットを生産する生産技術モデルを利用して生産性指数を計測する。その際、アウトプットとして通常のアウトプットの他に望ましくないアウトプット(自殺率、犯罪率などの社会指標)を含めることにより、それら負の要因の増加を止めるとしたらどれだけGDPが減少するかをモデル上で計測し、負の要因を除去するために用いられた望ましいアウトプットを控除してGDPの修正指標を作成する。またインプットには社会資本および自然資源などストックの期首における水準を含めるとともに、その期末の水準を望ましいアウトプットとして含めることで資本を維持することのコストをモデル化し、マクロ的な経済指標に持続可能性の観点を導入する。 このような入出力の設定の下で、生産技術モデルから指向性距離関数をDEAの手法を使って計測し生産性指数を計測することで、GDPの代替指標を計測する。この場合、知られている生産性指数の要因分解公式を用いてGDP代替指標の種々の要因への分解も可能となる。特に技術進歩要因と効率性要因のGDPへの貢献を評価できる。 以上の目的を達成するため、実データとしてわが国の都道府県別データを用い代替指標を計測した。また併せて既存の代替指標によって得られている結果と比較して、ここで提案する代替指標の特徴と適用の限界を検討している。現時点では指向性距離関数の推定結果に問題が残り、完全に整合的な解釈が可能な代替指標の計測結果が得られておらず、改善のための対策を試行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度末の段階でGDP代替指標の構成とその計測法は理論的に完成していたが、GDP代替指標を計測するための指向性距離関数の推定に問題があった。問題のない範囲で分析することは可能であるが、都道府県データを用いる場合すべての都道府県についてGDP代替指標を計測することができなくなる。そこで今年度はデータを見直し、都道府県別データについて入替を行いRIETIのR-JIPデータベース2017から多く採取することとした。特に社会資本データを内閣府のものと入れ替えたところ推定結果の改善が見られている。その他、自然資本、環境負荷データの種類を増やし推定を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
指向性距離関数の推定が計量経済学的に難しい場合は、DEA(データ包絡分析)によって距離関数を評価する方法に切り替える計画であった。今後はこの方針を採用し、DEAを用いたGDP代替指標の計測に使用する。DEAの実行にはGAMSを用いる。GAMSのライセンスは過去に購入したものがなお有効であるが、この機会にアップデートを行う。GAMSのコードは、以前作成したものをベースにして拡張することで比較的容易に準備可能と考えられる。 一方、計量経済学的方法によるアプローチについては昨年度までの経験を踏まえ、理論的に満足できる結果が得られる範囲でGDP代替指標の計測を行うこととする。その計測結果はDEAによって得られたものと比較し頑健性のチェックに利用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナ感染症流行二年目であったが、引き続き対策に多大な時間を消費せざるを得なかった。一昨年はほぼすべてリモートであったが昨年度はハイブリッド対応のため新たな環境整備に追われた。この結果、課題であった指向性距離関数の推定結果の改善が十分に進まず、そのための新たなデータセットの整備も完成していない。この結果、旅費、研究補助のRA雇用経費、論文の英文校閲費用の他、更新を予定していたPCとその周辺の支出も含め研究費の執行は全く進んでいない。今年度はこれら昨年度の予定をすべて執行して研究を進め最終目標に到達する。
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