研究課題/領域番号 |
18K01546
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
難波 明生 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (60324901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 縮小推定 / スタイン型分散推定量 / ブートストラップ法 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、平均や回帰係数の分析だけでなく、分散の推定量についても分析を行った。分散の推定については、スタイン型分散推定量と呼ばれる推定量が、通常の推定量よりも小さなMSEを持つことが知られている。このことは、スタイン型分散推定量は通常の推定量よりも真値の周りに集中した分布を持っていることを意味しており、スタイン型分散推定量を用いることにより、より精度の高い統計的推測を行える可能性がある事を意味している。スタイン分散型推定量については分布関数が求められており、パーセント点を数値計算で求める事は可能であるが、分布関数は未知パラメータを含んでいる上に複雑な形状をしているため、信頼区間の構築や仮設検定などの統計的推測に解析的な分布関数を応用するのは容易ではない。そこで、スタイン型分散推定量に対してブートストラップ法を応用することを考え、その有効性について検証した。まず、理論的な分析を行い、スタイン型分散推定量に対してはブートストラップ法による分布近似が漸近的に有効であることを示した。これは、平均や回帰係数に対するスタイン推定量に対してはブートストラップ法による分布近似が有効でないという事実と対照的な結果となっている。さらに、コンピュータ・シミュレーションにより、ブートストラップ法の近似精度を分析した。シミュレーション結果により、ブートストラップ法による近似の精度は小標本でも良好であることが示された。以上の分析結果は所属大学の紀要で公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の分析では、これまでの研究で分析してきた手法が分散の推定の場合にも応用できるかを分析した。分析の結果、スタイン型分散推定量については、平均及び回帰係数に対するスタイン推定量とは異なり、通常のブートストラップ法を応用することで分布を近似できることが示された。スタイン型分散推定量の平均自乗誤差は通常の分散推定量の平均自乗誤差よりも小さいため、この結果を応用すると既存の方法よりも短い信頼区間を得ることができる可能性がある。このように、平均や回帰係数に対する推定量と、分散の推定量について、どちらも縮小推定量の一種と考えられるにも関わらず通常のブートストラップ法の有効性が異なるという結果は興味深いものであり、今後さらなる分析が求められる可能性を示唆している。以上の事から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、これまでの研究で考案した手法を分散の推定量に応用し、有効性を確認した。今後の研究では、これまでの研究結果を発展させ、スタイン型推定量および正値スタイン型推定量の分布の近似精度を改善する、より一般化したリサンプリング法を用いてその有効性を検証する予定る。また、線形制約のような事前情報が与えらた場合の縮小推定量の特分析・応用についても検討している。今後の研究についても、必要に応University of California-Riverside の Prof. Aman Ullahおよびamen University のDr. Haifeng Xuとコンタクトを取りながら進めていく予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画にそって円滑に研究を進めるための物品調達など、適切に予算を執行したが、研究打ち合わせのための出張をコロナ禍のために見送らざるを得ない状況であったため、予算に残額が生じた。残額については、今後の研究を効率的に行うため、次年度の予算と合算して執行する予定である。
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