研究課題
本研究の目的は、通常の確率フロンティア分析法に事業体の経済行動原理を導入した場合の効率性を求めようとするものである。通常の確率フロンティア分析においては、経済主体にとっての実行可能性条件に基づいて非効率性を計測する。事業体の目指す行動原理がフロンティア自体に体現されているという考え方とは異なり、本研究においては、事業体が現に従う行動原理が先にあると想定する。すなわち、それが客観的に期待される行動原理(例えば利益最大化)とは異なる部分が、非効率性として内生的に出現するというものである。日本の公立病院を事業体とみなした先行研究の多くにおいて、非効率性と財政支援の関連が示唆されてきた。本研究の着想によってこの結果を再検討すべく、特定の行動原理を病院に仮定する先行研究のモデルを用いて、非効率性がどのような分布になるのかを統計的推測を経ずに計算することを試みた。この結果、財政支援に依存する非効率性の分布は、半正規分布などの標準的な非効率性分布とは考えにくいことがわかった。特に、非単調性に対して否定的な結果である。以上の結果を論文化して専門の国際学会にて報告した。データ期間を変化させて分析した場合にも、非単調性が見られないなどの分布特徴は引き続き観測された。一方、非効率性が財政支援に依存する点では共通であるが、分布の尾部などに違いが見られることもわかった。このことを、他の非効率性要因の存在を示唆するものとして捉え、国際学会にて報告した。2022年度においては、財政支援への依存構造を変化させた場合の分析も行い、やはり非単調性について否定的な結果を得ている。これを、論文にて報告した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)
The Society for Economic Studies, The University of Kitakyushu Working Paper Series
巻: 2022-4 ページ: -