研究課題/領域番号 |
18K01549
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森 博美 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (40105854)
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研究分担者 |
長谷川 普一 新潟大学, 自然科学系, 研究員 (50719680) [辞退]
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 部長 (80415827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国勢調査 / 行政情報 / データマッチング |
研究実績の概要 |
本研究の諸課題は、①国勢調査の調査票情報の独自処理によるものと、②公的統計の調査票情報と行政が保有する行政情報(住民基本台帳登録情報)とのマッチングデータ(統合データ)を用いた分析からなる。本研究の採択後ただちに取り組んだ統計法第33条による基幹統計(国勢調査)利用申請の許可を受けて、平成30年度にはこれらの課題に取り組んだ結果、以下のような研究実績を得ることができた。 ①の国勢調査の調査票情報を用いた独自集計処理を内容とする分析課題については、国勢調査の調査票情報の独自集計については、同調査が持つ居住期間についての「出生時から居住」者の居住期間分布が属性間で異なりうることから、結果的に既存集計における居住期間分布が実際に常住する者の居住期間と異なるものとなっているか否かの確認作業を年齢別集計処理過程を追加することで行った。そのデータ処理結果からは、「出生時から居住」者の居住期間分布が明らかに属性間で異なるとの知見が得られた。これは常住人口の居住期間分布に関して既存の公的統計の結果表章方式を改善し、より直接的に分布情報を提供しうることを示唆するものであり、現在、その結果の公刊に向けての作業を行っているところである。 また②に関しては、空間情報を補助情報として用いた大規模データの小地域への切り分けデータ化によるデータマッチングに関する方法論の実データへの適用作業を行った。本研究グループが独自に開発したマッチング法を約80万レコードに適用した結果、その約75%について照合が得られた。国勢調査と住民基本台帳での人口把握の特徴を考慮すれば、今回のマッチング結果は十分に分析的有効性を持つものである。現在、照合結果の精査作業中であるが、この手法適用の汎用的価値を考慮して、これについての学会報告あるいは論文による公刊を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究計画は、公的統計(国勢調査)の①調査票情報を用いた研究と②同情報と行政情報(住基データ)とをリンクした統合データを用いた地域間人口移動に関する研究の部分とから構成される。そのため、①②に関しては本研究の採択後ただちに統計法第33条に基づき2000年、2010年、2015年の国勢調査の調査票情報の利用申請を担当部署に対して行った。また、②に関しては今回マッチングを行うデータに共通する項目が性と年齢に限られる一方対象個体数が80万レコードと大規模であるため、境域を微小地域に切り分ける方法をとったため、併せて総務省統計局に対して国勢調査の基本単位区の境域データの利用申請を行った。 ①に関しては33条申請によって許可された国勢調査の調査票情報を用いた研究に関しては、すでに常住者の居住期間分布に関して既存研究にはない新たな知見が得られた。学会報告、学術論文の公刊、さらには統計改善提案といった形での社会還元、さらには居住期間分布情報の新たな活用法の開拓などに取り組みたい。 一方、②に関しては、国勢調査の調査票情報と同調査の基本単位区の境域情報の使用許可を得て住民基本台帳のレコードを基本単位区ベースで切り分けたサブデータセットに対して性と年齢情報を用いたexact matchingの手法を適用して個体ベースでのデータマッチングを行った。目下、照合率に関する個人・世帯属性、さらには地域特性との関係について精査作業を行っているところである。 なお、今回の空間情報を補助情報としたマッチング法は異種の情報源情報の横断面データリンケージの方法として本来考案したものであるが、作業の過程で特定の人口集団に対しては、固有のリンクコードを持たない異時点間の縦断面マッチングの手法ともなりうるとの知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
公的統計(国勢調査)の①調査票情報を用いた研究と②同情報と行政情報(住基データ)とをリンクした統合データを用いた地域間人口移動に関する研究とから成る。 ①の国勢調査の調査票情報を単独使用した分析については、現在取り纏め中の居住期間分布に関する独自集計結果に基づく分析結果を踏まえ、「出生時からの居住者」の居住期間を各居住期間に再配分したことで得られる「居住期間分布」の移動分析面での活用可能性について、研究協力者である自治体側での政策課題などとも関連づけて研究の展開を図っていきたい。 ②の公的統計の調査票情報と行政情報の統合データを用いた研究については、2018年度が統計法第33条その他に基づく統計・境域データの利用申請作業の関係もあり、データのマッチング作業が中心となった。ただ、マッチング作業の中で本研究グループが準備していたマッチングの方法論の妥当性が確認できたとともに、マッチング結果として得られた統合データが持つ固有のデータ特性といった形で、データ論それ自体としても有意義でしかも統合データの利用の方向に関しても有益な示唆を得ることができた。今回のマッチング結果は統合データ論という研究の新たな展開方向が一つ考えられる。 今回のマッチング作業により十分に分析的価値を持つ統合データが得られたことから、本研究の本来的に課題としてきた移動分析に本格的に着手したい。 さらに本研究申請時には想定していなかったことであるが、今回適用した空間情報を補助情報として用いたデータマッチング法が、特定の人口集団については異時点間の縦断面リンケージの手法としても適用可能であるとも追加的な知見が得られた。それを受けて目下申請中の第33条の追加利用の許可が得られ次第、統合データのパネル的結果利用などにも研究を拡張することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果報告のための学会出張経費が、開催場所並びに開催日程等の関係で予算作成時に当初想定していたよりも実経費が少なかったことで代表者(森博美)、研究分担者(小池司朗)双方に次年度使用額が発生した。なお、次年度使用額については、2018年度の研究成果の学会等での発表及び縦断面データの作成、利用という本研究グループの研究計画の拡張に伴なう研究協力者も含めた研究打ち合わせの経費等への使用を予定している。
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