研究課題/領域番号 |
18K01551
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
足立 高徳 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (60733722)
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研究分担者 |
中島 克志 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (90721572)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 圏論的確率論 / フィルトレーション / 動的認識論理 / 板情報過程 / 高頻度取引 |
研究実績の概要 |
本研究の基盤は,圏論的確率論をベースにした理論と,金融市場のマイクロ・ダイナミクスの実証実験に必要な高頻度データベースにある. 研究代表者の足立は,研究分担者の中島とともに「圏論的確率論のファイナンスへの応用(Applications of Categorical Probability Theory to Finance; ACPF)」というタイトルで,8月と2月にワークショップを開催し,他の研究者とともに,理論的側面に光を当てた議論を展開した.これらの議論は,(1)時間一貫性のない確率過程の最適化問題,(2)一般化したフィルトレーションの拡張,(3)各エージェントが持つ主観的フィルトレーションによる資産価格の評価,および(4)コモディティの convenience yield の圏論的表現,など多岐にわたるもので,エージェントの信念の変化も含む微細構造による構造的アプローチを理論化する作業であった.特に足立は,(3)に関する中間結果を,海外を含む2件の会議で発表した. 実証実験に必要な高頻度データベースを構築するあたって重要なのは,板情報過程の再現である.これに関して,研究代表者の足立は,日本証券取引所が提供している FLEX Full のヒストリカル情報を使って研究を進める準備を行った.また,足立は高頻度取引への応用の観点で板情報力学を含むアルゴリズム取引の理論および一般への啓蒙についてまとめた書籍を1編出版し,これに関する講演も行った. さらに足立は,株式だけでなく仮想通貨の板情報過程の研究もあわせて行い,ビットコイン価格の時系列理論の応用に関する 英語の共著論文1編が出版され,英語のワーキングペーパー1編を公開した.なお,このワーキングペーパーでの結果は特許出願中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の足立は,高頻度取引に関する英語の共著論文1編,およびビットコイン価格の時系列に関する英語の論文1編がそれぞれ出版された.またビットコインの参照価格に関する研究を1件英語の共著ワーキングペーパーにまとめ投稿した. さらに1日分で10GB程度になる大規模な固定長バイナリ形式データから,板情報を再生するために必要なCSVファイルを取り出すためのライブラリ開発の予備実験を終え,実装面での準備を整えることができた. 圏論的確率論に関しては,足立と研究協力者の琉との英語の共著論文が1編採択された.さらに主観的フィルトレーションに関するこれまでの研究結果を,研究分担者の中島と琉との3人の共著のワーキングペーパーにまとめる目処がたっている. また中島は,convenience yield に関する研究結果を,国外を含む5つの会議で発表し,今後の圏論的確率論を使った展開に道筋をつけた.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の足立は,研究分担者の中島,研究協力者の琉との共著での主観的フィルトレーションに関するワーキングペーパーをまとめ,それについて国内外での発表をする.また2019年度中に,この論文の英文査読論文誌への投稿を目指す. さらに2018年度に続いて,「圏論的確率論のファイナンスへの応用」ワークショップを1,2回開催する予定である.
実証データによる解析については,東証の10年分のティック・データの解析ライブラリの初版を完成させ,その上でエージェントを動かすための人工市場の構築を目指す.その際に,機械学習の手法を応用することも考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究代表者の足立の国際会議の出張費用が想定よりも低かったこと,およびデータ解析用PCの発注を手控えたことによる..ただし,その余剰分を年度内に使いきるよりも,次年度により高機能なデータ解析用PCを購入するほうが妥当と考えたため. (使用計画)次年度にデータ解析用PCの購入費用に充てる予定である.
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