研究実績の概要 |
当該年度は, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) パンデミックの発生に伴い, 当初の研究計画を大きく変更し, 感染症拡大による経済不確実性の上昇が市場リスクに与える影響について, 種々の多変量ボラティリティ変動モデルを用いることにより分析することを研究目標とした. 具体的には, COVID-19 感染拡大前後の日本の金融市場における業種別データを用い , 構造変化とボラティリティ波及効果について分析した. 構造変化の検出には複数の変化点を捉えることができる ICSS アルゴリズムを, ボラティリティ波及効果の測定には BEKK-GARCH モデルを適用した. 結果としては, 日本の多くの産業において 2020 年 1 月以降に構造変化が発生していることが示された. また, 波及ネットワークを作成することにより, COVID-19 パンデミック前後, つまり 2019 年と 2020 年の比較分析を行った. 結果としては, 2020 年のネットワークの方が各ノードが大きく, ネットワーク自体も密になっており, COVID-19 パンデミック後の方が各業界が発する波及が多く, また業界同士のつながりが密になっていることが示された. 今後は, 経済政策不確実性指数 (economic policy uncertainty index, EPU) およびボラティリティの代理変数である多変量実現カーネル (multivariate realized kernel, MRK) をデータとして用いることにより, COVID-19 の感染拡大による経済不確実性の上昇が市場リスクに与える影響をより包括的に分析する予定である.
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