研究実績の概要 |
構造VARモデルを用いる分析では、誤差項に正規性の仮定が置かれることが多いが、実際にはこの仮定は多くの場合に満たされていない。そこで本研究では誤差項は非ガウス型分布に従う場合の統計的推定問題を考察した。この問題に対して、我々は独立成分分析(Independent Component Analysis ICA)の理論を援用して、未知の非ガウス分布を推定することにより疑似最尤推定量を計算する方法を提案した。さらにこの推定法の有効性をモンテカルロ実験により確認した上で、実証分析に応用した結果、現実の経済現象とかなり整合性のある結果が得られた。またこの方法の統計理論的裏付けを、セミパラメトリック統計学の理論を使って示すことができた。またこのモデルにおける構造変化検定法として一種のCUSUM検定法を提案することができた。そして本研究の成果は、次の4点にまとめられる。(1)非ガウス型構造VARモデルの疑似最尤法の提案とその方法の有効性(2)セミパラメトリック統計学の視点からの理論的妥当性、(3)構造変化検定法として本研究が提案した新たな検定法の有効性、(4)我々の疑似最尤法を用いて、わが国の異次元金融緩和政策に関する実証分析結果の妥当性。(1)と(4)は論文として出版済み。(2)はEstimation of non-Gaussian SVAR models: A quasi likelihood function approach (Koichi Maekawa and Tadashi Nakanishi) として、(3)はChange Point Test for Structural VAR Model in Independent Component Analysis (Sangyeol Lee,Koichi Maekawa)として査読付き国際専門誌に投稿中である。
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