研究課題/領域番号 |
18K01556
|
研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
高石 哲弥 広島経済大学, 経済学部, 教授 (60299279)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マルチフラクタル性 / ハースト指数 / 情報効率性 / テイラー効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、まずビットコイン時系列の統計的性質を調べている。これまでに、絶対値収益率のべき乗の自己相関と収益率時系列のマルチフラクタル性、実現ボラティリティ変化の時系列の一般化ハースト指数等の研究を行った。 株価や為替の絶対値収益率のべき乗の自己相関では、べき指数の値が2以外の値で最大になるというテイラー効果が知られている。ビットコインの時系列についても同様の効果があるかどうかを調べたところ、べき指数の値が0.5付近で最大となることが分かり、ビットコインにもテイラー効果が存在することが分かった。また、自己相関のラグの違いによっても最大となるべき指数の値が違ってくることが分かった。 収益率時系列のマルチフラクタル解析では、得られたハースト指数の時間変動から、時系列が反持続的となる期間があることが分かった。そして、反持続性は取引の流動性と関連があり、流動性が低いときは反持続性が大きくなることが分かった。 ビットコインの高頻度データから日次実現ボラティリティを計算し、その変化の時系列の一般化ハースト指数を調べた。これまでに、株価等ではボラティリティ変化の時系列はハースト指数が0.5以下の反持続性を示し、一般化ハースト指数は定数値でモノフラクタルであるという研究が知られている。しかし、ビットコインのボラティリティ変化の時系列を調べたところ、一般化ハースト指数は一定ではなく、マルチフラクタル性を示すことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチフラクタル解析によってビットコインの時系列特性の時間変動を調べた。その結果、ビットコイン時系列は反持続性を示す期間があり、反持続性は取引の流動性と大きく関連することがわかった。この結果は論文にまとめ投稿中である。 また、絶対値収益率のべき乗の自己相関を調べ、べき指数が2以外の値で相関が最大となるテイラー効果がビットコイン時系列にも存在することを確認した。この結果の論文は採択され発表済みである。 その他に、ビットコインの実現ボラティリティを計算し、その変化の時系列にマルチフラクタル性が現れることを発見したが、その成果の論文も投稿中である。 このように、研究は順調に進み、これまでに研究成果を3つの論文にまとめることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、更にビットコインの性質を研究していく。特に、取引高の分布や取引高変化の時系列の性質、ボラティリティと収益率の相関、収益率と取引高時系列間の相互マルチフラクタル性等を研究する。また、ビットコイン以外の仮想通貨にも研究を広げ、それらの時系列の性質を調べ、ビットコイン時系列の性質との比較を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
専門的知識の提供として講師を招待する予定であったが、都合が合わず招待できず、人件費に余りが生じたが、今夏に招待を予定している。
|