今年度においては、3つの研究に取り組んだ。第一は、日銀が非伝統的金融政策の一環として行っている、株式買入の効果に関する分析である。本分析においては、ノンパラメトリックな手法を用いて因果識別を行い、株式買入の株価に与える効果が非線形となっていることを示した。具体的には、金額が大きくならないと効果がなく、また株価が下がる局面においてのみ効果がある。現在は、草稿を取り纏めつつ、国際的学術誌への投稿を展望している。 第二は、伝統的な金融政策の効果に関する非線形の分析である。厳密に金融政策ショックを識別したうえで、金融政策効果がショックの大小によって異なりえることを示した。本分析は、東大でのセミナーや2回の国際学会にて発表を行い、内外の有識者から有益なコメントを貰った。今後、論文として取りまとめて、国際的学術誌への投稿を展望する。 第三は、テイラールールのパラメータ推計に関する分析である。本分析では、経済変動の背景にあるショックごとに分けて、パラメータ推計を行う方法を考案した。これを用いて、背景にあるショックによって金融政策の反応が違うことを示した。これは、通常の経済研究で想定されている金融政策に関する仮定が満たされない可能性があることを示唆している。研究は、東大でのセミナーで発表を行い、追加分析を実施中である。
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