研究課題
サービス価格の水準に地域間で乖離があることを考慮に入れて都道府県別価格差指数を作成し労働生産性との相関をみると、正の相関を観察することができる。一方、国際経済学の分野では、先進国と発展途上国とを比較して前者の国内価格が後者の国内価格よりも高くなる傾向があることが知られており、こうした現象はバラッサ・サムエルソン効果と呼ばれている。国内の地域間で観察された価格差指数と労働生産性の関係は、これと類似の現象であり、地域版バラッサ・サムエルソン効果と呼ぶことができそうである。それでは、こうした類似の関係を成り立たせている背景要因も、国内地域間と国際間とで同じなのであろうか。まず、先進国における貿易財部門と非貿易財部門との生産性格差に注目する国際版のバラッサ・サムエルソン効果の説明は、国内地域間で同様には成り立ってないことを確認した。そこで、地域版バラッサ・サムエルソン効果には別の背景要因の説明が必要となる。本研究では、その背景要因として、地域間の地価に起因する要因と、地域間の労働コストに起因する要因の二つを考え、両者の重要度を比較することを目的とする。そのために必要なデータ作成作業として、まず、整合的な都道府県レベルの産業連関表と、通常は要素所得の営業余剰のなかに混ぜ込まれてしまっている土地サービス投入コストを推計した。次に、都道府県別産業連関表(2005年表)から、競争輸入・移入を考慮したレオンチェフ逆行列を作成し、それを使って産業連関分析の価格モデルを適用し、土地サービス投入コストと労働サービス投入コストの地域内価格波及を計算した。以上の準備のうえで、二つの価格波及効果の比較分析を行い、これらの結果を論文にまとめた。その後英語論文を作成し、2022年10月に英国で行われる7th World KLEMSでポスター発表を行った。
すべて 2022
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)