研究課題/領域番号 |
18K01567
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安達 貴教 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (50515153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不完全競争 / 市場支配度指数 / 厚生評価 / 価格差別 / 価格転嫁 |
研究実績の概要 |
不完全競争下にある寡占的企業が取る行動の現実的な特徴を見据えながら、競争政策的対応における諸施策に関する評価に対しての経済理論的な観点からの基礎付けを与えるべく、「基本的なコンセプト、とりわけ、実証的な検証を伴うことが出来るような、経済学的に意味のある諸概念(例えば、需要の価格弾力性やパススルー値など)から指標を構成することによって、政策上の変化が経済厚生や消費者余剰に与える因果効果がどのように特徴付けられるか」という研究代表者による近年の研究上における問題意識との関連において、本研究課題は位置付けられる。第2次年度目に当たる平成31年度・令和元年度においては、データを用いた実証的な検討を行ってゆく過程において、市場支配度指数(conduct parameter)の厚生評価における重要性、及び、寡占企業の行動に関わる多様な文脈(例えば、上流企業と下流企業とが明示的に考慮される垂直的取引構造や、広告支出などの非価格的戦略など)における適用可能性についての新たな可能性の糸口が見出されたために、これら諸点に重点を置いた経済理論的な観点からの検討に主眼を置いた。具体的には、古くから産業組織論では知られている「ドーフマン=シュタイナー公式」を独占の状況から、寡占的な状況に拡張するなど、既存の諸成果を更に一般化するような方向性での研究にも意を注いだ。更に加えて、平成30年度から継続している「寡占的第3種価格差別」と「不完全競争下における多次元価格転嫁」のトピックスについても、上記「市場支配度指数」の観点からの理解を深めることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」で述べたように、市場支配度指数の多様な文脈における適用可能性に関しては、幾つかの方向性について多面的な検討を行ったが、既に、令和元年度中に、これらの研究成果の一つを、査読制の英文学術雑誌に掲載しており、また、本実施状況報告書の執筆・作成時点である令和元年度から2年度初頭にかけても、更にまた別の研究成果が査読制の英文学術雑誌に掲載されると同時に、複数の他の研究成果についても、複数の査読制英文学術雑誌からの改訂要求を受けている。このように既に本研究課題からのアウトプットがコンスタントに継続しており、更に加えて、令和2年度中に投稿可能な論文が既に複数あるのみならず、論文としてまとめることを目標としている複数のトピックスについても分析を進行させており、以上の諸点に鑑みて、本研究課題の進捗は、「おおむね順調に進展している」と判断することが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である本令和2年度においては、上記「現在までの進捗状況」で述べたように、複数の査読制英文学術雑誌からの改訂要求をひとまず重視する他は、そこから既に派生しているトピックに関しても出来る限りでの深化を進める。のみならず、上記「研究実績の概要」で述べた「寡占的第3種価格差別」と「不完全競争下における多次元価格転嫁」の二つのトピックスについては、本研究課題の初年度であった平成30年度から相当の進展を見たが、現執筆時点において、双方を査読制の英文学術雑誌への投稿作業が大詰めであり、程なくして最初の投稿が完了する予定である。更には上述のように、派生して関連する理論的研究や、平成30年度から継続中の実証的研究についても、更なる発展を目指すことによって、本研究課題終了後の令和3年度以降をも見据えて、「研究実績の概要」でも述べたように、研究代表者が今後も発展させていきたい問題意識の継続的持続に繋げていくことを目標とする。
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