研究課題
当該年度は、ニューケインジアンモデルによるマクロ・ファイナンスへのアプローチとして、基本モデルとなるRudebusch and Swanson(2012)のモデルの数値計算によるリプリケーション(再現)を行った。この数値計算の内容は、matlabを用いた摂動法によるインパルス応答関数の導出計算などのシミュレーションである。なお、この基本モデルの効用関数は、Epstein and Zin (1989)が提案したリカーシブ型の効用関数であり、リスク回避と代替弾力性の分離を行えることが利点であるが、他方で、この効用関数は非線形であり、従来型の対数線形モデルでは扱えないことが問題であった。今回、このリカーシブ型の効用関数を従来の対数線形化したケースとテイラー3次近似まで行った場合の2つのケースでのインパルス応答関数の相違点を比較した。現在、この基本モデルのカリブレーションまでしか作業していないが、日本のデータで推定できる感触までつかめた。また、当該年度は、RISEという数値計算ツールによる金融政策と財政政策のレジームスイッチ型ニューケインジアンモデルのカリブレーションと推定の研究にも取り組んできたが、本マクロ・ファイナンスのモデルにも、このレジームスイッチタイプのマクロ動学モデルが導入できるのではないかとチャレンジしたものの、このレジームスイッチは対数線形化モデルしか対応できず、非線形モデルには適用できないことが判明した。換言すれば、効用関数を従来の線形モデルにすれば、ニューケインジアンモデルによるマクロ・ファイナンスにレジームスイッチタイプにすることができることが確認できた。
3: やや遅れている
現在 国際雑誌に投稿中の他の研究論文のリバイズ・再投稿作業が重なったために、作業の中断が発生した。
以下の方向から本研究について、まとめていく予定である。(1)ゼロ金利や価格硬直性の非対称性という非線形現象の中で、政策担当者が金利の期間構造まで射程に入れた場合の金融政策の効果が、従来の線形モデルでしか扱わなかったケースと比較して、どのような相違が存在するのか。(2)もし非線形現象と線形の間で相違する時、金融政策担当者はどのような事項を考慮にいれて(社会的厚生を最大化するという意味で)最適な金融政策を実施すべきか。(3)ゼロ金利制約下で、ニューケインジアンモデルに金利の期間構造を入れた場合と入れない場合で、金融政策の反応はどのように相違するのか。期間構造のマクロ経済モデルにおける位置づけとゼロ金利制約の意味。
消耗品費に充当予定。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
In: Stelios Markoulis (Eds.) Financial Crises, INTECHOPEN LIMITED, London, UK, ISBN 978-1-78923-857-0
巻: 1 ページ: 1-21
DOI: 10.5772/intechopen.90729