新型コロナの影響のため、現地に赴いての新しいデータの収集や共同研究の打ち合わせは最後の2年間は皆無に終わったが、それらに充てる時間を論文執筆に割くことに専念した。その結果、研究成果物としては満足のいくものをいくつか論文として出版もしくは掲載受理にまでこぎつけることが出来た。以下、いくつか列挙する。 まず、ベトナム戦争時にアメリカ軍によって集中的に爆撃が行われた隣国ラオスにおいて、その爆撃の経済発展への長期的な影響を検証した論文が、開発経済学分野のトップジャーナルであるJournal of Development Economicsに採択された。本論文では、経済発展のアウトカム指標に村レベルの夜間光の強度と人口密度を用いて、村に投下された爆撃の強度を説明変数として用いた。爆撃の強度の操作変数として、爆撃が集中的に行われた地域からの距離を用いた。これらの変数は地理空間情報を駆使して作成されており、まさしく本研究課題に合致した論文であるといえよう。ラオス北部では依然爆撃の負の影響が残っている一方、南部では必ずしもそのような結果が明確ではないことが示された。 他にも、ベトナムの経済特区のインパクト評価の論文がJournal of Regional Scienceに、ベトナムの地域政治家のえこひいき政治と企業行動の関係を分析した論文がEconomics of Transition and Institutional Changeに、ミャンマーにおける長期的地域紛争と初等教育就学の関係を分析した論文がJournal of Asian Economicsに掲載された。 上記に挙げた論文を含め合計で研究期間全体で15本以上の論文が、査読付き国際的学術誌に掲載もしくは掲載のため採択された。よって、研究実績としては大きな成果が得られたと言って差し支えないと考える。
|