本研究は,コンテナ港湾の市場を対象として,産業組織論的な観点から,その市場構造,市場行動,および市場成果を分析するものである.より具体的には,コンテナ港湾間の競争について,「容量制約がない規模の経済性の下での競争」と位置づけた上で,これらの競争の帰結をモデルによって表現し,現状と照らして定量的・定性的双方の見地から,当該市場の市場成果の評価を試みるものである.なかでも,本研究では,港湾間競争と港湾の統合という2つのケースを比較することでその経済厚生に与える影響に着目している. なお,本研究は2018年度から3年間にわたって実施するものであったが,コロナ禍の影響によって期間を1年延長した.4年目となる2021年度は,2点を進めた. 第1に,非協力ゲームの枠組みを用いて,港湾間競争と港湾の統合のモデル化を進めた.近接する2つの港湾の間で,両港湾がコンテナの獲得競争をする港湾間競争のケースとこれらの港湾を統合するケースについてモデル化した上で,それぞれの均衡価格を求めた. 第2に,上記の港湾のモデルを拡張し,空港間の競争及び統合の事例に適用した.具体的には,福岡空港と北九州空港という隣接する2空港を対象として,空港間競争と空港の統合によるそれぞれの経済厚生面の効果を,数値計算を用いて比較した.その結果,空港の統合運営に対する一定の効果が確認されている.この成果は,専門誌(公益事業研究)において掲載されている.
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