研究の最終年度としてはこれまでに残されていた課題に取り組むとともに、今後の新規課題への準備を見据えて研究を進めた。具体的には都市ガス産業については、引き続き動学モデル推定に関する理論構築および検証シミュレーションによるトライ&エラーを行った。この研究については、まだ確定的な実証結果が得られていないため、今後の研究課題として引き続いでいく予定である。また、今後の新規課題として、分析対象となる規制産業と市場を広げていくことを考えている。このための基礎調査のため、主に住宅市場を取り上げてデータ収集、文献調査および予備分析を行った。この研究については大阪市の学校選択制を事例として取り上げる予定であるが、初期的な分析結果を2023年6月に早稲田大学で開催された実証産業組織論のワークショップ(JEMIOW-TOKYO)で報告した。 本研究課題の期間全体としての主な業績としては、まず都市ガス産業の規制の在り方について、市場への新規参入の側面から実証分析したことがあげられる。特に都市ガス産業では規制緩和後に公営事業からの事業譲渡を通じての新規産業が多いが、この点に関して生存時間分析のフレームワークを用いた分析を行った。この研究成果はKobe University Monograph Series in Social Science Researchとして出版したPrivatization of Public Gas Utilitiesに掲載している。また、都市ガス産業以外を対象とした研究として、太陽光発電の普及政策に関する実証研究をJournal of the Japanese and International Economiesに掲載した。更に有斐閣から産業組織論のテキストを出版したが、この書籍内の規制産業の事例としてこれまでの研究成果を踏まえたコラムを複数掲載している。
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