研究課題/領域番号 |
18K01590
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
横田 一彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40390819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サプライチェーン / 付加価値貿易 / 貿易構造 |
研究実績の概要 |
前年度からの大きな進展は付加価値貿易が空間的な影響を持ち得る可能性に気づいたことである。近年の空間計量経済学の進展に伴って貿易の輸出国と輸入国の周辺地域のその貿易に与える影響の大きさを検証することが可能になってきた。たとえばジョセッペ・アルビア『空間計量経済学入門』やルサージ=ペース『入門空間計量経済学』では、一般に空間計量経済学はクロスセクション・データにおける従属変数間,その結果としての誤差項間の相関が生じると仮定することが推計方法の基本的な出発点であるとしている。空間計量経済学の「ラグ」は時間的なラグを意味せず,空間的(地理的)な相互作用を指し、時系列分析の自己相関項に形が似ているため,空間ラグと呼ばれる。パネルデータへの応用は時空間パネルデータ分析と呼ばれ、これを今回応用する予定である。 その他、基本的には貿易構造の変化をアジア,北米,ヨーロッパの3地域を対象に,付加価値貿易と中間財貿易構造の違いを明らかにする実証研究を進め、OECDの ICIOをもとに計算された中間財貿易指数と付加価値貿易指数が国際間の賃金格差,経済規模,物理的距離,共通言語や,宗主国関係の有無,自由貿易協定の有無といった要因にどの程度影響を受けているかを推計した。結果はこれまでの結果と大きくは変わらず,1.アジアとヨーロッパの最も顕著な違いはアジアでは賃金が安い国ほど中間財も付加価値も輸出している。2.アジアでは中間財と付加価値貿易の賃金水準と賃金格差の弾力性の値の差がヨーロッパのそれに比べて大きい→アジアでは絶対的な賃金水準と賃金格差が中間財貿易に与える影響に比べ,付加価値貿易を増大させる効果が小さいといった顕著な特徴がみられた。これらのことから付加価値貿易で見るとアジアではヨーロッパに比べより垂直的な産業構造があるという結果は昨年度と同じである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間計量経済学の理論的研究を終え、実証研究に応用する準備段階である。付加価値貿易の構成要素として各国の産業別資本のデータを入手し,それを推計に含めることにした点,推計方法に操作変数法,ポアソン回帰モデル,動学的一般化積率法,システム一般化積率法を含めた点が挙げられる。また、今年度に試みある空間計量経済学の手法に関する検討を終えたところである。当初のサプライチェーンを通じたアジア地域の貿易構造はEUや北米のそれとは異なり,賃金格差を利用した垂直的な貿易構造を持っているという仮説は支持されそうである。さらに特に雇用の空洞化に焦点を当てた研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果は2020年度の国際学会で発表を予定していたが,予定していた国際学会が新型コロナウィルスの影響で2021年度に延期になった。そこで2020年度中の学会発表はほかに予定していなかったが,かわりに学内外のワークショップで発表したいと考えている。 サプライチェーンは言い換えればオフショアリングの一形態であり,オフショアリングが進展すれば必然的に国内の雇用状況は変化する。一般に産業の空洞化と呼ばれる現象である。そこで2020年度にはサプライチェーンがもたらす労働市場の変化を世界60か国のデータを使用して明らかにする予定である。その際に使用するサプライチェーンを表す指数としてHelpman (2018)のVAX指数を用いる予定である。この指数の優れている点は付加価値がどれだけ自国から海外に流出したかを測ることができる点にある。海外での学会発表はコロナの影響で軒並みキャンセルになったが今年度は学会での複数回の発表を目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内学会出張が新型コロナウィルスの影響で中止になったため。繰越金を英語論文の英文校正費用に充てる予定である。
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