研究実績の概要 |
本研究課題では、財・サービスの消費に伴う時間コストを明示的に経済モデルに導入するとともに、消費者の最適な選択による労働供給量の内生的決定のモデルも同時に導入し、関税の引き下げや労働移動の自由化を含む貿易政策の自由化が与える影響について、一般均衡モデルで理論的に解明することが研究目的である。 研究期間中の実績のひとつである、Oda and Okawa (Japan and World Economy, 2018)では、小国の貿易モデルで貿易の自由化と外国人医療従事者(看護師)の受け入れ拡大の効果を分析した。本分析では、医療サービスの消費が財の消費と同様に消費者の効用を高める効果に焦点を当てていた。他方、医療サービスの消費は消費者の健康状態を改善し、その効用を高めるとともに、疾病による入院、通院などで失われる労働時間を短縮し消費者の労働供給量を増加させ所得を増加させる効果を持っている。消費者の医療サービスの需要量が労働供給量を増加させる所得効果を考慮に入れて消費量を決定するので、内生的に労働供給量も決定することになる。また、医療サービスの消費自体も時間を伴うので、その時間費用も明示的に取り入れた分析を行った。外国人医療従事者の受け入れ拡大、貿易財生産に携わる労働賦存量の減少(少子化による労働人口減少)及び国内医療従事者の供給量の変化などの比較静学分析を行い、一定の興味ある結果が得られ、論文、Okawa (Foreign Trade Review, 2022)として発表した。 他方、貿易の自由化の効果についての理論的分析として、寡占市場での関税引き下げと連動した物品税の調整の厚生効果を分析した、Okawa and Iguchi (2022)はそれぞれ Springerから出版された論文集に掲載された。
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