研究実績の概要 |
令和3年度は、国内政策が一国の比較優位に影響を及ぼすリカード型の二国モデルにおいて政策ゲームに関する分析を行った。同分析では、事前に同一の二国がそれぞれの社会厚生を最大化するように国内政策を選択する標準型ゲームを考え、各国の比較優位が両国の戦略的な政策選択の結果として内生的に決定されるモデルを展開している。本研究では、(ⅰ)ナッシュ均衡における貿易・特化パターン、(ⅱ)伝統的な貿易利益命題の妥当性、および(ⅲ)ナッシュ均衡における社会厚生の国際的格差について分析を行い、貿易費用と選好の偏りがそれらに及ぼす影響を明らかにしている。この研究成果の一部は、Suga et al. (2021)として日本国際経済学会第80回全国大会において報告されている。 上記の研究は、その分析枠組みの観点から、当該研究課題(国際貿易が垂直的連関市場における企業集積に与える効果とその政策的含意)の一環と位置づけられるものである。垂直的連関市場において上流部門が不完全競争的であるとき、サプライヤーの新規参入(企業集積)は下流の顧客企業の生産費用を逓減させる効果をもつことが知られている。それらサプライヤー企業群が供給する中間財への依存度が消費財によって異なるならば、上流部門に対する政府による参入統制は消費財生産の比較優位に影響を及ぼすことになる。ゆえに、社会厚生を最大化するように国内政策を選択する政府を想定した上記の政策ゲームに関する分析は、社会的最適な上流企業数についての考察を目的とする当該研究課題に対して適用可能な一つの重要な結果を示すものと言える。
Suga, N., Tawada, M. & Yanase, A. (2021). Public intermediate good and endogenous Ricardian comparative advantage, mimeograph.
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