研究課題/領域番号 |
18K01607
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
飯田 健志 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (40584561)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境技術移転 / アウトソーシング / 環境政策 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、途上国における知的財産制度の有無が、先進国企業から途上国企業への環境技術移転に与える影響を理論分析によって明らかにすることである。想定している技術移転は、アウトソーシングを通じた先進国の川下企業から途上国の川上企業への垂直的環境技術移転である。構築したモデルでは、汚染源として、途上国の川上企業の生産工程から二酸化炭素などの汚染物質が排出されるケースを想定し、途上国政府が汚染1単位に対して税率tの環境税を課す。 本年度は、重要な分析的視点として、技術を受け入れる国の技術吸収能力(absorption capacity)を反映する環境技術の操作費用を分析に導入した。したがって、途上国の川上企業は、環境技術移転によって環境税の負担を減らすことができるが、その一方で、環境技術の操作費用を負担するというトレードオフに直面する。 本年度の重要な成果は、先進国企業が川上企業に環境技術を移転するのは部品価格の下落を期待するためであり、環境技術移転は2つの経路(直接効果と間接効果)を通じて部品価格に影響を与えることを明らかにした点である。直接効果は、環境技術移転が直接的に部品価格に与える影響であり、環境税の水準が環境技術の操作費用よりも高ければ、環境技術移転により、川上企業の費用負担が小さくなり、部品価格を下落させる。一方、間接効果は、環境技術移転が環境税率を通じて部品価格に与える影響である。 上記の結果を用いれば、川上市場への新規参入(技術を模倣する企業の参入)が先進国企業の環境技術移転のインセンティブに与える影響を明らかにすることができる。したがって、上記の結果は、途上国における知的財産制度が有効なのはどのような状況か、という本研究課題の学術的問いに答えるための理論的根拠となるため、重要な成果の一つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析結果をまとめる予定であったが、新たな分析的視点をモデルに導入したことで、知的財産制度の有無による途上国社会厚生の比較ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、知的財産制度の有無(途上国における新規参入企業の有無)による途上国の社会厚生の大きさを比較し、途上国における知的財産制度が、途上国の社会厚生を改善するための条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果をまとめるのに時間を要し、学会発表にかかる旅費や論文投稿料などに使用することができなかったため。次年度は、研究成果をまとめ学会発表にかかる旅費や論文投稿料として使用する予定である。
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