研究課題/領域番号 |
18K01610
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金京 拓司 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (50527637)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 通貨危機予測 / 機械学習 / 金融ストレス・ショック波及 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国経済の減速、資源価格の低迷、米国の金融政策の転換などの国際経済環境の変化が、東アジア新興国のマクロ経済や金融システムの安定性に及ぼす影響について包括的に検証するとともに、政策対応の指針を示すことを目的としている。具体的には、①機械学習の手法を活用したより精度の高い危機発生予測モデルを構築し、東アジア新興国経済の脆弱性を評価すること、②米国の金融市場環境の変化が東アジア新興国の銀行システムに及ぼす影響について、個別銀行の財務データに基づいて詳細に分析すること、③新たな国際経済環境の中で東アジアにおける地域金融協力が直面する課題を明らかにし、その改善策を示すこと等の取り組みで学術的な貢献を果たそうとするものである。これらのうち本年度は、主に①と②に重点を置いた取り組みを行った。まず①に関しては、機械学習の手法を活用した新興国等の通貨危機および銀行危機を予測するモデルをそれぞれ開発し、その結果を2編の論文にまとめて査読付国際学術誌に投稿し、採択・刊行された。次に②に関しては、米国の金融ストレス・ショックが新興国等の銀行システムに及ぼす影響に関して、当該国の法制度の質や外国資本銀行の役割等に着目しつつ、個別銀行の財務データを用いて分析を行った。その結果は論文にまとめて査読付国際学術誌に投稿し、採択・刊行された。そのほかに、ラオスを訪問して中央銀行のスタッフと同国のマクロ経済安定の現状と課題について意見交換する機会があり、途上国経済の脆弱性や金融安定の課題について、理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により、研究計画にしたがって、研究目的の達成が概ね順調に進展していると考えられる。すなわち、①研究計画の第一段階に位置付けられていた東アジア新興国の経済的脆弱性およびそれを取り巻く国際経済環境の変化に関する実態把握を相当程度行うことができた。②さらにその結果を踏まえて、研究計画の第二段階に位置付けられていた危機予測モデルの開発や金融ストレスショックの国際的な波及に関する実証分析に着手し、その最初の成果を3編の論文として公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度以降も引き続き、研究計画に従って、東アジア新興国の経済的脆弱性およびそれを取り巻く国際経済環境の変化に関する実態把握、機械学習等の先端的な手法を活用した経済危機予測モデルの開発、金融ストレス・ショックの国際的な波及が新興国等の金融セクターの安定性に及ぼす影響の実証分析などを進める。そのために必要なデータベース・計量分析ソフトウェアの購入や海外現地調査の実施を中心に研究支出を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
月単位で購入しているデータベースの利用期間が予定より短かったため、物品費の支出が計画を下回った。次年度は、データベースの利用期間を長くすることを検討している。
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