研究実績の概要 |
本研究課題の主たる目的は、ASEAN諸国経済が先進国水準に到達するための方策を提示することである。西山(研究代表者)が全体の統括と理論研究、スクサバン(分担者)が実証研究を担当している。2020年度は、(1)入手したベトナム個票データの整理とデータベース作成、(2)異質性を導入した開放経済モデルによる理論・実証研究、(3)研究会の開催と研究成果の対外発信に注力した。 (1)については、データのクリーニング作業が概ね完了し、現在は変数リストを作成している段階である。また、テーマ別プロジェクトチームを立ち上げ、研究を開始している。上記のデータベースが完成次第、実証分析を行う予定である。 (2)については、企業の異質性を組み込んだ独占的競争貿易モデルによる複数の理論・実証論文を執筆・投稿している段階である。現時点において、[1]Nishiyama, Fujimori, Sato、[2]Nishiyama, Furuta, Sugiyama、[3]Nishiyama, Gintani, Tsuboiが査読付き外国雑誌に投稿中、[4]Nishiyama & Gintani、[5]Nishiyama, Kato, Kamata、[6]Nishiyama, Takada, Tsuboi、[7]Nishiyama, Gintani, Sugiyama、[8]Nishiyama, Yamaguchi, Gintaniの諸論文が学会発表あるいは投稿前の段階にある。さらに、本研究の主要テーマである「東南アジア諸国への技術伝播」に関する本格的な調査・研究も進行中である。これは上記のベトナム・データを用いた実証論文の形でまとめる予定にしている。 (3)については、昨年度に引き続き他の基盤研究や所属機関研究所と連携しつつ、本課題に関連する研究会を開催した。研究会の情報はWebsiteにて公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の続く2020年度は、現地調査や新たなデータ購入をあきらめ、理論・実証研究に専念した。本研究課題に関連する重要な問題を取り上げ、各分野の専門家を交えたテーマ別プロジェクト・チームを発足させた。すでに複数の理論・実証モデルが完成している。「研究実績の概要」に記載した成果のうち[1]~[3]は査読付き外国雑誌に投稿中、[2]、[3]、[6]は兵庫県立大学DP(No.117, 119, 127)として発刊した。これらの論文は企業の異質性を導入した独占的競争モデルを土台としている。[2] はインド産業レベル・データを用いた排出規制の有効性に関する理論・実証研究、[3]、[4]、[8]はいずれも公正賃金モデルによる理論研究である。[3]は動学モデルによる貿易自由化と経済成長、[4]は貿易自由化と所得・厚生、[8]は賃金引下げによる経済効果に関する研究である。[6]はサーチ・マッチング・モデルを用いた雇用の二重配当仮説に関する理論研究、[7]はFDIを導入したモデルによる排出規制に関する理論研究である。[1]と[5]は2019年度の成果であるため説明は省略する。さらに、東南アジア諸国への技術伝播に関する研究も開始している。本研究用に購入した原データの情報量が膨大であったため、データのクリーニング作業にやや手間取ったが一通りの作業は完了した。 また2020年度も、他の基盤研究(研究代表者:佐藤隆広、加藤篤行、藤森梓、福味敦)や所属機関研究所との連携の下で「神戸国際経済研究会:KIES」を管理・運営し、本課題を主要テーマとする研究会を開催した。当研究会の情報は研究会Websiteで公開している。 ほぼ事前の計画通りに研究が進行しているため、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。ただし新型コロナの影響により事前の研究計画を一部変更せざるを得なかった点は残念である。
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