令和4年度は、令和3年度から取り組んでいる研究成果をDiscussion Paperとして取り纏めた。この研究では、中国からの輸入競争の影響を、工業統計(経済産業省)から得た企業・事業所レベルのデータを用いて、企業がどのように対応しているかを、雇用調整、ならびに製品転換に焦点を当てて分析した。その結果、中国からの輸入による競争がますます厳しくなる状況に直面する企業にとって、製品転換が重要な反応であることが判明した。具体的には、企業は、まず雇用調整のみを選択する傾向があるが、その後、輸入競争が強まるにつれて、製品切り替えのみを選択するようになり、最終的には、中国からの輸入競争が増加するにつれて、雇用調整と製品切り替えの両方を選択するようになることが示された。 研究成果全体を通じて実施した研究成果としては、1)輸入競争による製造業企業の事業転換という観点から、製造業企業のサービス化についての分析、2)輸入競争による生産品目の状況を、単一製品事業所、複数事業所所有企業、複数地域に展開する企業で比較し、その特徴を整理する分析、3)輸入競争という負のショックに対する企業の対応方法についての分析を行った。これらの研究から、日本の製造業企業は極めて柔軟に企業組織を変換し、輸入競争に対応していることが分かった。一方で、柔軟な対応ができる企業は比較的規模の大きい企業であり、中小零細企業では事業規模が縮小する傾向にあることが分かった。
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