研究課題/領域番号 |
18K01622
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
伊藤 由希子 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (30439757)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域医療構想 / 病床機能 / 財政健全化 / 集積 / 空間依存 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における病床機能再編政策が与える影響のうち、各地域の、(Ⅰ) 財政健全化及び(Ⅱ) 関連サービス機能の集積を評価することである。これは、従来の医療政策評価で行われてきた、医療機関に及ぼす直接的な影響のみならず、地方自治体や地域の関連産業に及ぼす間接的な影響を捉える発展的試みである。また、政策の財政的効果や経済的効果を、詳細な地域レベルで、空間依存性を踏まえて分析する点で、高次元的試みである。それぞれの具体的方法は下記の通りである。 (Ⅰ)病床の量的・質的再編が、 保健・医療・介護サービスを担う自治体財政に与える間接的影響基礎自治体(1720団体)単位の地方財政状況調査表(公営企業会計・健康保険・介護保険繰出金) に基づいて各地点の通院圏内(1時間以内)の病床機能再編事例(2008年以降)による影響を抽出する。 (Ⅱ)病床の量的・質的再編が、 関連サービス産業立地などの都市機能に及ぼす間接的影響 基礎自治体(1720団体)単位で集計した、 介護サービス情報公表システム・医療情報ネット・経済センサス(基礎調査) を用い、病床機能再編事例が関連サービス産業の集積に与える影響を考察する。 2019年9月に厚生労働省が、病床機能報告(H29)をもとに、急性期の診療実績が少なく、かつ他医療機関と近接する公立・公的病院(急性期病床機能を報告する病院)の名称や一部数値を公開したことで研究の分析射程が大きく拡大した。2019年度は、これらの医療機関(特に公立病院)の財務情報と照らし合わせ、上記(Ⅰ)(Ⅱ)の効果を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り、厚生労働省から「病床機能報告」に基づき、急性期機能の再編が必要とされる具体的な公立・公的医療機関が公表されたことで、情報公開という点 でも、機能再編の議論の進展という意味でも研究環境が向上した。これにより、論考や分析などを深めることができた。一方で、急性期機能の再編が必要とされ る民間医療機関については非公表(各都道府県には通知)と、情報公開状況が後退している。また、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、 行政の機能や病院の業務に多大な影響が発生したことから、2019年度末までに予定していた調査事案には遅れも生じている。
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今後の研究の推進方策 |
病床再編を行う単位である医療圏の類型化を進めた結果、特に「医療圏を越える患者の流出入が少ない自己完結型」「人口規模が10万人以上50万人未満」に焦点をあてて、地域医療の機能再編と財政的影響を引き続き考察する。また、医療機関単位での分析も引き続き進める。特に、機能再編の議論の俎上にある公立医療機関の、地域における機能分担(その廃止も含む)について、その財政的な維持費用と照らし合わせた分析結果を地域ごとに提示する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
政策動向の調査と資料収集を行い、公的統計に基づいて、地域の類型化を進めた。いずれも、公表資料をインターネット上で収集でき、分析についても通常の研究設備の範囲で行うことができたため、本研究費の費用の支出を要さなかった。 また、出張等については、関連研究テーマに合わせて自治体・病院・省庁等の訪問を行ったため、別研究費にて代替することができた。
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