本研究課題「病床機能再編政策による財政健全化・ヘルスサービス機能の集積の効果」は2018年4月より5年間にわたって取り組んだ研究課題である。研究期間全体を通して総括する点は大きく3点ある。まず1点目は研究課題の特性上、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大に伴い、研究対象である医療機関や行政部門に大きな環境変化があったことである。2点目として、病床機能再編政策は、長期的に人口構成の変化に対応するばかりでなく、短期的にも個々の病態と病床機能のミスマッチを防ぐために重要である点が再認識されたことである。3点目として、財政健全化、病床機能再編自体はCOVID-19対策の為大きく後退したことである。 上記をふまえ、学術研究としては2つの点を重視した。1つは、COVID-19以前(2019年度まで)の病床機能の地域における重複や、それに伴う具体的な治療アウトカムの問題を明らかにし、平時・緊急時を問わず、病床再編が依然重要である点を指摘することである。そしてもう1つは、財政健全化を大きく後退させることとなった医療機関への包括支援交付金(3年間で約17兆円)や各種の財政支出の妥当性を検証することである。これらは最終年度の研究発表においても重視している。財政については今後も2022年度分までの情報を収集するなどして検証を継続する。 なお、ヘルスサービス機能の集積など、都市機能(サービス立地)の変化については、COVID-19における緊急事態宣言下の制約もあり、十分な情報収集が現状不足している。この点については今後の課題としたい。
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