研究課題/領域番号 |
18K01624
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
武智 一貴 法政大学, 経済学部, 教授 (80386341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貿易コスト / セーフガード / 世界貿易機関 |
研究実績の概要 |
本研究は、製品の品質と価格の関係を考慮した供給パターンからの貿易コストの識別と、世界貿易機関で認められている貿易救済措置によりもたらされる貿易コスト増加の影響の検証を行った。 予期しない輸入の急増が国内産業の売上・利潤等を減少された場合には、緊急貿易制限措置(セーフガード)と呼ばれる貿易制限を実施することができる。中国からの生椎茸・ネギ・い草について、日本は2001年に輸入の急増から暫定セーフガード措置を発動した。この政策の国内市場に与える影響を卸売市場データを用いて分析を行った。セーフガードによる関税措置により、輸入価格は上昇し輸入量が減少した事により、貿易制限の目的は達成したと言える。しかしながら、国産財の価格はあまり変動せず、マークアップも影響を受けなかったため、国内産業の保護という目的は必ずしも達成できたとは言えないことが明らかになった。したがって、セーフガード政策の実効性・発動についてより詳細な研究の蓄積が必要であると言える。 また、貿易コストの識別には、貿易量を用いて推定する手法と、取引価格を用いて推定する方法があり、これまでの研究から取引価格を用いた貿易コストの識別が可能である点が明らかになっている。しかしながら取引価格は財の品質等に影響を受けており、財の品質と貿易パターンの関係を考慮した形で貿易コストの測定を行う必要がある。財の品質を取引価格情報を用いてコントロールした上で貿易パターンから貿易コストの識別を行うことに成功し、理論的取り扱いが困難なため、多くの先行研究では十分には考慮されていない従量型と言われる貿易コストの重要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政策に基づく貿易コストの変動に関する研究は、査読英文学術雑誌に採用されており、この分野における貢献となっている。 財の品質と貿易パターンを考慮した貿易コストの識別については、修正を行いつつワークショップでの報告などを行って海外学術雑誌に投稿し修正している。 多くの学会が中止等になったため、技術的な貿易コストの要因である道路輸送の研究や、市場ごとの価格づけを考慮した貿易コストの識別の研究については、共同研究者との議論を通じた修正を行い、海外学術雑誌に投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文の修正を行い、また、修正に付随した点を新しい論文作成に反映させる。修正した論文および新規論文については英文学術誌に投稿を行う。修正の際に新たな推定・数値計算が必要となった場合はそれらを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
多くの学会が中止になり、旅費等の支出の必要がなくなったため。ウェブセミナーや共同研究者との打ち合わせなどを通じて修正論文を英文学術雑誌に投稿するために必要な計算環境・英文校閲などに支出する予定である。
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