本研究は、世界貿易機関で認められている貿易救済措置によりもたらされる貿易コスト増加の影響の検証を行った。また、市場ごとの価格づけによりバイアスが生じる貿易コストの識別と、交通事故データを用いて、交通事故の決定要因・事故削減の政策についても分析を行い、陸運に関わる貿易コストの検証を行った。 中国からのネギの輸入と国内市場のデータを用いて、日本が2001年に生椎茸・ネギ・い草の輸入に対して発動した暫定セーフガードの影響を分析した。予期しない輸入の急増が国内産業の売上・利潤等を減少された場合には、セーフガードと呼ばれる貿易制限を実施することができる。2001年の日本によるセーフガードでは、輸入価格は上昇し輸入量が減少した事により、貿易制限の目的は達成した。しかし、国産財の価格は変動せず、マークアップも影響を受けなかったため、国内産業の保護という目的は必ずしも達成できたとは言えないことが明らかになった。 また、貿易コストの識別には、貿易量を用いて推定する手法と、取引価格を用いて推定する方法があり、これまでの研究から取引価格を用いた貿易コストの識別が可能である点が明らかになっている。しかしながら取引価格は市場ごとの価格づけにより貿易コスト以外の要因に影響を受けており、市場ごとの価格づけと貿易パターンの関係を考慮した形で貿易コストの測定を行う必要がある。価格づけのバイアスをコントロールした上で貿易パターンから貿易コストの識別を行い、貿易コストが地域間の取引に対して先行研究で考えられていた以上に大きい影響をもつ点が明らかとなった。 交通事故データを用いた研究では、高齢者の交通事故リスクを計測し、自動ブレーキといった安全装置の交通事故削減効果を検証した。自動ブレーキは、高齢ドライバーの交通事故リスクを下げている点を明らかにし、貿易コストの低減に重要な役割を果たすことが示された。
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