今後の研究の推進方策 |
金融摩擦と異質的経済主体が存在する場合、全要素生産性がモデルのパラメータから内生的に決定されるので、経済全体の生産性がどのような要因によって決まっているのかが明らかになる。また、これまで、金融摩擦の無いマクロ経済モデルでは、純資産と資本は同一視されてきた。しかし、金融摩擦と異質的経済主体が存在する場合、純資産と資本は区別される。そのため、経済全体の自己資本比率の挙動の分析が可能となり、経済全体の負債の順循環的パターンを説明する研究が進展するであろう。 現在、金融摩擦ショックが投資の楔を増加させるのか否かということが、論争になっている。つまり、投資の楔が景気循環においてそれほど変動しない}という見解 [Chari, Kehoe, and McGrattan (2007)]と投資の楔が景気循環において大きく変動するという見解 [Christiano and Davis (2006)]に分かれている。担保制約がストック変数の場合、貸し渋りは経済全体の自己資本比率と投資の楔に影響を及ぼさないので、Chari, Kehoe, and McGrattan (2007)の見解を支持することとなり、担保制約がフロー変数の場合、貸し渋りは経済全体の自己資本比率と投資の楔を増加させるため、Christiano and Davis (2006)の見解を支持することとなるであろう。要するに、担保制約のあり方が、内生的な全要素生産性、自己資本比率、投資の楔の決定要因となるため、金融摩擦の基となる様々な担保制約を検討することが重要である。 本研究の分析フレームワークを2部門生産経済へ拡張することが新たな着想である。消費財と投資財の生産、あるいは、サービス業と製造業の生産が、内生的に決定されるメカニズムが明らかになるからである。これにより、ペティ・クラークの法則の内生的メカニズムが明らかにされる。
|