本研究課題で得られた一番の大きな成果は、全国統一的な診療報酬ルールの下では医師の地域偏在をなくすことは難しいことを理論及び実証分析から示したことである。この成果は、2019年度に第一報としてAmerican Economic Associationで学会報告し、2020年度、2021年度においてより精緻化させた上で、権威ある国際学術論文に投稿し、現在査読を受けている最中である。したがって、特定の地域に絞った適切な政策介入の必要性があり、これを明らかにすることが今後の研究課題となる。 上記成果の他に2021年度においては、最終年度ということもあり、新たな研究課題を創発すべく発展的な分析にも取り組んだ。Internet of Things (IoT)の発達により、医療においては日々の健康状態をウェアラブル端末にて情報収集し、それを活用することが可能になりつつある。このような社会において、企業がどのような製品開発および価格決定を行うかについて理論分析を行った。その結果、IoTの発達により、企業が他社との製品差別化を控えてしまう可能性があることを明らかにした。この成果は日本応用経済学会にて報告を行った。 また、医療に関わる副次的な研究としてコロナ禍が出生行動に与えた影響について実証分析を行った。その結果、政府の自粛要請により、日本全体の妊娠数が5~8パーセント減少した一方で、それを防ぐような政策的介入を行った自治体はその減少が2~3パーセント緩和されたことが明らかになった。この成果は論文としてApplied Economics Lettersに掲載された。
|