研究課題/領域番号 |
18K01633
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
武田 史郎 京都産業大学, 経済学部, 教授 (00364688)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温暖化対策 / 炭素税 / 環境税制改革 / 応用一般均衡分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、応用一般均衡モデルを利用し、今後導入が検討されている温暖化対策の経済的影響を定量的に分析するという研究である。特に次の3つのサブテーマを設定した上で分析を行う予定である。サブテーマ1:原発の利用レベルの検討、サブテーマ2:環境規制によって生じる収入の用途の検討(環境税制改革、二重の配当分析)、サブテーマ3:国際間での排出権取引の導入。
本年度は分析に必要なモデル、データの構築の作業をおこない、シミュレーション分析に取り組んだ。まず、サブテーマ2については以下のような作業をおこなった。第一に分析に用いる動学的なCGEモデルの構築をおこなった。このテーマでは、2050年までのCO2の排出規制を分析するが、その際に特に環境税制改革という形の政策をとりあげる。環境税制改革とは排出規制(炭素税)を導入するとともに、既存の税を減税するというような政策である。このような分析をおこなうには、1)2050年までの長期のCO2削減政策を分析可能、2)既存の税を考慮したモデルで、その減税を分析可能という二つの特徴を有するモデルを構築する必要がある。 1については、長期のCO2削減において重要な意味を持つ再生可能エネルギーと炭素回収貯留(carbon capture and storage)を考慮したモデルを作成した。2については、日本の代表な税である所得税、消費税、法人税の減税を分析できるようにした。その上で、CO2を80%削減するという目標を達成するための環境税制改革の分析をおこない、それが二重の配当をもたらすかどうかを分析した。その際に、サブテーマ1についても検討できるように、原発について複数のシナリオを設定して分析をおこなった。分析結果は学会の大会や研究会において発表した。 サブテーマ3については分析の準備として、多地域モデルの構築をおこない、試行的なシミュレーションに取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ2について:必要なモデルやデータの構築を終わらせ、その後、シミュレーションにとりかかり、政策シナリオの分析をおこなった。その結果、様々な政策インプリケーションを得るところまでできた。 サブテーマ1について:サブテーマ2の分析をおこなう際に、原子力発電について複数のシナリオを想定し、分析をおこなった。原子力政策の変化に関して一定の洞察を得ることはできたが、今後の原子力政策をどうするべきかということを明らかにするにはまだ分析が不十分な段階にある。 サブテーマ3について:比較的新しい社会会計表をベースにした多地域モデルの構築をおこなった。具体的にはGTAP10データをSAMとして利用する形のモデルを作成した。ただ、まだ国際間の排出量を分析できるまでの水準までには達していない。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1:2020年度には日本の原子力の利用政策を分析するためのCGEモデルを構築し、その分析をおこなう予定である。既にサブテーマ2を分析するためのモデルを構築しているため、それを改良する。特に、原子力発電部門、及びその代替となりうる再生可能エネルギーによる発電の部分を改良し、原子力発電についての様々なシナリオを分析する。原発利用の有無が日本経済に与える影響をシミュレーション分析によって定量的に明らかにする。 サブテーマ2:サブテーマ2については分析自体はかなり終わっているが、まずモデルやデータの改善に取り組む。その上で分析をおこない、分析内容の精緻化を図る。さらに、分析結果を論文にまとめ、投稿する予定である。 サブテーマ3:モデルの構築はある程度進んでいるので、2020年度はモデルを完成させ、シミュレーション分析をおこなう。まずは各国が独自に排出規制をおこなう政策を分析し、その後、国際間で排出量取引をおこなうケースの分析をおこなう。国際間の排出量取引により各国の経済がどのような影響を受けるのか、国際間の排出量取引は各国に望ましい効果をもたらすのかをシミュレーションによって定量的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたソフトウェアを購入しなかったことと、予定していた海外出張にいかなかったために次年度使用が生じた。次年度にはソフトウェアの購入と出張をおこなうために利用する予定である。
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