温暖化対策(CO2排出量の削減)の必要性は社会的に認知されているが、現状では日本を含めて多くの国において温暖化対策が十分進んでいるとは言えない。その最大の理由は温暖化対策が(少なくとも短期的には)経済的な負担をもたらすと考えられているためである。従って、今後、温暖化対策をスムーズに進めていくためには、できる限り経済的な負担が小さい削減手段を用いていく必要がある。そのためには、様々な温暖化対策の効果を事前的、定量的に評価する研究が必要になる。 応用一般均衡分析(CGE分析)はそのような研究に用いられるアプローチであり、本研究はCGE分析を用いて、日本における温暖化対策の効果を評価するというものである。本研究では特に環境税制改革の効果を分析している。環境税制改革とは炭素税などの温暖化対策の導入に伴い、既存の税制を改革する(具体的には、減税する)という政策のことを指す。温暖化対策はそれ自体経済に負担をもたらすが、同時に減税をおこなうことで経済への負担を大幅に低減できる可能性があるというのが環境税制改革である。本研究では、炭素税の導入ともに所得税、法人税、消費税などを減税するという環境税制改革をCGEモデルを利用して分析した。その結果、純粋な炭素税の導入よりも、環境税制改革という形をとった方が、経済への負担が小さくなる場合があることを明らかにした。 日本では今後本格的な温暖化対策の導入が進むと考えられる。炭素税の導入も検討されているので、本研究の研究結果は炭素税の制度設計をおこなう際に有用な情報となると考えられる。
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