研究課題/領域番号 |
18K01635
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮田 幸子 立命館大学, 経営学部, 教授 (10646764)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | education policy / compulsory education law / human capital / education and inequality / regional inequality / household survey data / 義務教育化 |
研究実績の概要 |
1)インドネシアについては、調べた結果当時の義務教育化の法律執行が厳格になされなかったという報告があり、地域間の義務教育化の実施時期に差が出た可能性が高い事が判明した。そのため、義務教育の政策を全国一律の政策として取り扱う当初の仮説は慎重に見直すべきであると判断した。そこで、関連する教育政策について現地資料を継続して調べるとともに、研究の独自性という観点から義務教育政策の影響に限らず教育拡充のための関連する政策に注目しつつ、教育格差、地域格差、消費支出格差等の観点にも焦点を当て、研究を実施することとした。 今回は研究協力者の研究者ネットワークの協力を得て、アジアの近隣国であるミャンマーのデータを入手することができた。そのミャンマーにおける格差問題について教育と格差について検証を行った。また、ブータンの家計調査データを取得できた事から、アジアの比較国としてブータンについても検証に入った。 2)スリランカについては、教育政策の影響をある程度確かめる事ができた。共同研究者や協力研究者の協力を得て、さらなる家計調査データを入手できるかどうかの可能性についても継続して議論し、最新のデータ入手の手続きのための準備を行った。その結果、昨年部分的に取得したHIESのデータを申請し、2002年のほぼフルデータを取得した。次に、取得したデータを用いて、初等教育の義務化政策実施によるスリランカの個人の教育レベルや賃金などへの影響について操作変数モデル等を用いて分析した。その結果、初等中等教育が義務化された時期に学校に在籍し影響を受けた者は、そうでなかった者に比べて中等教育の修了率が有意に高かったことが分かった。部分データでの結果をサポートする結果であった。また学会にて分析へ生かせる有益なコメントが寄せられたため、それらに基づき分析枠組みの再整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に基づいて分析を進めている途中に、複数の研究協力者の予期せぬ異動が決まったため計画を修正することとなったため。スリランカについては、協力研究者が現地情報の収集を中心的に行う予定であったが、国際的な異動が決まったため、計画の大幅な変更が生じた。インドネシアについては、協力研究者が新たに役職に付いたため、研究分担や役割を調整することとなった。また文献検索の結果、当時の教育政策の法律執行にかなりの地域差があった可能性が高い事も判明し、研究の戦略を慎重に検討することとなった。 以上の中で想定内であった部分については、研究のサブトピックを含めて検討し既に調整を行っている。想定外の研究協力者の異動についても、調整した上で研究の役割及び分担を見直す事で対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象国の教育政策について現地資料などの文献検索を継続するとともに、教育政策に関わる経済成長及び貧困削減に着目し、より包括的に個人への経済的社会的影響を考慮する事とする。インドネシア、スリランカともに経済成長するに伴って、その成長が貧困削減に貢献しているかどうか(Pro-poor growth)、その重要性が再認識されている。その為、所得格差、貧困、教育政策に関する資料と学術的な文献の収集を広く行う。貧困・Pro-poor growthに関連する各種の指標についても整理を行う。またインドネシアの統計局、関連省庁を訪問し、所得格差、教育格差やその格差是正政策や貧困削減に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データの収集を行う(但し各省庁への訪問については、新型コロナ感染や国内外移動制限の状況による)。具体的には、 1.2期間の家計調査データを用いて、地域経済成長と貧困削減に関する研究を行う。この研究では、2000年代と2010年代の2期間のデータを用いて経済成長が貧困層に配慮したpro-poorな成長であったかを様々な指標を用いて地域別に推計し、地域格差に着目して比較検討を行う。そこから示唆される貧困削減や国内格差是正のための政策的なインプリケーションをまとめる。さらに、データの入手状況と研究の進捗状況によって、可能であれば教育拡充を実施した他のアジアの国との比較研究を行う予定である。 2. スリランカについては、家計調査データ(HIES)の取得を継続するとともに、既にHIESデータを用いて様々な教育政策の分析を実施している世界銀行等の国際機関や研究所の担当者等にコンタクトを取り、スリランカの貧困削減、教育政策などについてヒアリングを行う。なお協力研究者が中心となって現地情報の収集を行う計画であったが、新型コロナの影響や協力研究者の役職等により今後調整する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は想定外の研究協力者の国際的な異動から、主に研究協力者によって予定されていた海外出張旅費が変更・延期となった。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりに伴い、年度の後半に予定していた出張が、国内・海外移動の制限によりキャンセル・延期となり、その結果旅費の使用が大幅に無くなったため。 次年度の使用計画としては、コロナの感染状況と対象国における政府の出入国制限の状況の様子を把握しつつ、制限が緩和され次第、延期となった出張計画を再開し実施する予定である。当初の対象国の入国制限が改善されない場合も想定し、対象国を広げるなどの調整を行う計画である。
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