研究課題/領域番号 |
18K01635
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮田 幸子 立命館大学, 経営学部, 教授 (10646764)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | education policy / skill mismatch / labor outcomes / growth incidence curve / regional inequality / household survey data / 義務教育政策 |
研究実績の概要 |
第1に、インドネシアにおける大学卒業生追跡データを用いて教育レベルとスキルのミスマッチと賃金の関係について実証研究を行った。前回行った分析では限られた変数を用いての分析であったため、今回はスキルに関する変数を追加して分析した。またパネルデータを用いてさらに分析を進めた。パネルデータによる分析の結果、仕事で要求される教育レベルより高い教育レベルを持つ労働者(over-educated)は、教育レベル適当者(required level matched)に比べて賃金が低く、プールド回帰分析と同様の結果が得られた。但しパネルデータは欠損地が多くサンプル数がかなり小さくなり、分析に制限があるため解釈に注意が必要である。以上の分析結果は論文にまとめ、学会にて公表した。 第2に、家計調査データを用いて教育と地域格差に関する研究を2つ行った。 1. インドネシアやフィリピンにおける教育と消費支出格差に関する比較研究を家計調査データを用いて都市と農村間の構造的な違いを考慮して行った。インドネシアとフィリピンの教育格差が都市農村消費支出格差の大きな要因になっていることが明らかとなった。 2. 2時点(2004年から2014年)の全国社会経済調査による消費支出データを用いて、インドネシアにおける経済成長と貧困削減に関する分析をpro-poor growth indexやgrowth incidence curveを使って地域ごとに行った。データ期間の10年間における比較的高い経済成長は大幅な消費支出格差の増加を伴った。しかしインドネシア全体で見ると貧困率は27%から10%まで減少しており、貧困削減にかなりの効果があったといえる。一方で州ごとに見ると、経済成長の貧困削減効果にはかなりの差がある事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究を踏まえ所得格差や貧困に関する最新の資料と文献の収集を行った。研究成果の公表については主に以下の3つである。 1.インドネシアにおけるインドネシアの大学卒業生追跡データを用いて教育レベルとスキルのミスマッチと賃金の関係に関する実証研究の成果については、分析結果を論文にまとめ、労働経済学の学会にて発表した。また、当初は国際学会において論文投稿し発表を予定していたがコロナ過により学会がキャンセル・延期となった。 2.家計調査データを用いたインドネシア、フィリピン、ミャンマーのASEAN3か国における教育と消費支出格差に関する研究の成果ついては、国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。この論文については、2021年6月にSpringer社から出版される予定の本の一章として掲載される予定である。3.2時点間の全国社会経済調査による家計消費支出データを用いたインドネシアにおける経済成長と貧困削減に関する地域分析の成果も国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。4.一方、全国社会経済調査による家計消費支出データを用いたインドネシアの農村地域と都市地域における経済成長と貧困削減に関する研究の成果はEconomic Research Institute for ASEAN and East Asia (ERIA)のディスカッションペーパーとして公表した。 新型コロナウィルスの感染拡大により予定していた国際学会での研究成果の発表ができなかったが、本研究は計画を大幅に調整して一定の研究成果を出す事ができた。一方でコロナ過の影響により国際移動が著しく制限され、現地調査が実施できなかったトピックについては大幅な調整となった。その点で当初予期していない事態となり、計画の調整や変更を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も継続して教育政策や教育レベル、スキルレベルと労働アウトカムの関係、及び所得格差や貧困に関する資料と文献の収集を行う。新型コロナウイルスのアジアでの感染状況次第であるが、インドネシアなどを訪問し地域格差是正に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データの収集を行う。また、新型コロナウィルス感染状況が改善しない場合には現地調査を伴わなくとも実施可能な研究で対応する予定である。 具体的には以下の研究を予定している。 1. インドネシアの卒業生追跡データの年数を追加し、教育レベルとスキルレベルの労働者アウトカムに関する実証研究を行う。 2. バングラデシュの2時点の家計調査データを用いて、地域経済成長と貧困削減に関する研究をpro-poor growth indexなどを使って行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で予定していた海外出張及び海外における国際会議が中止かオンライン会議になったため、その分の海外出張費が未使用となったため。 使用計画としては、インドネシアの統計局、国家開発計画庁、教育関連の省庁や大学などを訪問し、所得格差是正、貧困削減、教育に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データや地域所得データの収集などを行う予定である。(但し海外出張そのもの、及び各省庁への訪問については、新型コロナの感染状況や国内外の移動制限の状況による)。また分析に必要なコンピュータ本体や周辺機器などを購入したり、データ整理・分析の補助などを依頼するリサーチアシスタントへの謝金などに使用予定である。
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