研究課題/領域番号 |
18K01636
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大西 宏一郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60446581)
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研究分担者 |
西村 陽一郎 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10409914)
山内 勇 明治学院大学, 経済学部, 講師 (40548286)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 特許 / ソフトウェア / 中小企業 / シグナリング |
研究実績の概要 |
中小企業の特許取得のシグナリング効果によって、ベンチャーキャタルなどの外部の資金提供機関との情報の非対称性の解消機能がどの程度機能しているのかをソフトウェア分野を対象に実証的に分析した。ソフトウェアは90年代になってはじめて特許化が可能となった技術分野であり、その時点での特許のシグナリングの役割を分析することで、外生的なショックに焦点を当てた分析が可能となる。なお、中小企業では一般的に資金制約が大きく、ベンチャーキャピタルからの出資が必要とされる一方で、ベンチャーキャピタルから見ると、中小企業に関する情報が少なく、情報の非対称性の程度が大きい。したがって、特許取得は有用なシグナリングとして機能すると考えられる。分析では、内生性の問題を解決するために、弁理士事務所の立地件数を操作変数として用いた。分析結果では、特許取得はソフトウェア企業におけるベンチャーキャピタルからの出資を加速化させることが明らかとなった。また、比較のために用いたソフトウェア著作権の登録件数も同様にベンチャーキャピタルからの出資につながることがわかった。ただし、両方の権利を取得することは追加的な出資につながらないことを示す結果を得た。また、2000年以降、特に著作権登録のベンチャーキャピタル出資への効果が弱くなる傾向が見られた。以上の結果から、特許権はシグナリングとして、情報の非対称性を解消する手段として機能しているが、一方で、ソフトウェアの著作権も同様な効果があり、少なくとも2つの知的財産権が並立していることは、シグナリングの観点において、必ずしも有用でないことを示していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科研費に関連する内容で複数のディスカッションペーパーと掲載論文が出ている点では順調に研究が進んでいると言える。しかし、研究計画にある弁理士事務所を使った操作変数の作成について、どの程度ロバストなのかについては複数の研究者から疑義がでており、再度その方法について検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は操作変数の作り方を再度検討し、代替案を含め、因果関係を明確にできる手法を考える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の異動による研究資金の増加やデータ分析手法の再検討等による利用するデータ利用のタイミングの遅れが生じているため。
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