研究課題/領域番号 |
18K01637
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村上 礼子 近畿大学, 経済学部, 准教授 (30411565)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公益事業の小売自由化 / バンドリング / 実証分析 |
研究実績の概要 |
本研究の2019年度の研究計画のうち(1)公益事業の自由化が先行しているEU諸国(特に英国)の電力・ガス・通信市場の実態調査および政策的な論点の整理と考察、(2)バンドリングに関する経済理論・実証分析のサーベイの研究成果として、エネルギー小売市場の自由化において先行している英国の電力・ガス小売市場を対象として実証的な考察を取りまとめた。英国の電力・ガス小売市場では、電力とガスの両方を利用するユーザーが両サービスを一つの事業者から購入する料金タイプ(Dual Fuel Plan)が一般的である。英国のエネルギー料金比較サイトから入手した各事業者の小売価格データ(単品価格・バンドル価格・バンドルディスカウント)を用いて、英国当局による 公表資料やバンドリングに関する理論的先行研究の知見を念頭に置きつつ、バンドリングがユーザー行動や市場の競争にどのような影響を与えているかという点について考察した。バンドリング戦略は、市場の競争を激化させる方向に作用する一方で、利用者のスイッチを妨げる効果も有すると考えられる。エネルギー小売市場の完全自由化において先行している英国の状況を分析することは、小売自由化間もない日本のエネルギー小売市場へ示唆を与える。 当該成果物は、すでに査読付きジャーナルに投稿しており、現在査読中である。論文タイトル「公益事業の小売自由化における料金とバンドリング-英国の電力・ガス小売市場を対象として-」。 さらに、日本の電力およびガスの利用者の個票データ収集のための調査票の作成に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本の電力およびガスの利用者の個票データ収集のための調査票の作成とアンケートの実施を2019年度に予定していたが、調査票の設計作業が遅れたために2019年度末までにアンケートを実施することができず、次年度に繰り延べた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の早い時期に、日本の電力・ガス利用者の個票データ収集のための調査票を完成し、アンケートを実施する。基本的な分析手法としては、離散選択モ デルを採用する予定であるため、各利用者の各サービスの利用状況、セット販売に対する選好や契約先をスイッチしたかどうかの履歴などのデータを入手できる ように調査票を設計している。個票データの収集方法としては、Webアンケートを予定している。さらに、収集したデータを用いて、バンドリングが利用者の選択行動にどのような影響を与えているか、売り手の市場支配力の強化や競争上の優位性につながっているかという点を定量的に明らかにするために計量経済学的手法を用いた分析を行う。必要に応じて、追加的なヒアリング調査等を行い、実態をより正確に把握するよう努める。また、分析結果を学会等で報告し、研究者や実務家から助言を得ながら分析手法やデータの加工等を改良する。最終的には、成果物を査読付きジャーナルなどで公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に日本の電力・ガス利用者の個票データ収集のためのWebアンケートを実施する予定であったが、調査票の作成の遅延によりアンケートの実施を次年度に繰り延べた。よって、Webアンケート会社への委託費が次年度使用となった。2020年度の早い段階で、Webアンケート会社へ個票データ収集作業を委託する計画である。
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