2019年度中に、エネルギー小売市場の自由化において先行している英国の電力・ガス小売市場を対象として、事業者のバンドリング戦略がユーザーの行動や市場の競争にどのような影響を与えているかという点について実証的な考察を取りまとめた。その成果を査読付きジャーナルに投稿し、2020年度に掲載された(村上礼子「電力・ガス小売自由化における料金とバンドリング‐英国のエネルギー小売市場を対象として‐」(2020年9月)経済政策ジャーナル17 巻 1 号 p.37-51)。 日本においては、2016年に電力、2017年にガスの小売市場完全自由化が行われ、利用者が電気とガスを同じ事業者からセットで購入するという形は一般的にみられるようになった。小売完全自由化後の日本の電力・ガス市場において、バンドリング販売が市場の競争にどのような影響を与えうるのかという点を検証するために、電力およびガスの利用者のデータを収集し、実証的な経済分析を行った。まず利用者の電気やガスの契約内容等を把握するためのアンケート調査票を作成し、大手のWebアンケート会社に委託して、家計管理者を対象にWebアンケートを実施した。その個票データを使って、バンドリングが利用者の事業者スイッチ行動にどのような影響を及ぼすのかという視点で、離散選択モデルを用いて分析を行った。それにより、電気とガスを同じ事業者からセットで購入している利用者は、他の事業者にスイッチしにくいという関係があるという結果が得られた。その結果は、バンドル購入することによって、利用者にとってのスイッチングコストが高まり、市場競争が弱められる可能性があることを示唆している。その成果は、日本経済政策学会第78回全国大会にて報告することが決定している。学会発表後、査読付きジャーナルへ投稿する予定である。
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