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2018 年度 実施状況報告書

循環型社会における混合リサイクル市場の理論分析

研究課題

研究課題/領域番号 18K01638
研究機関関西学院大学

研究代表者

猪野 弘明  関西学院大学, 経済学部, 准教授 (30546776)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードミクロ経済学 / 環境経済学 / 産業組織論 / 循環型社会 / 混合市場
研究実績の概要

循環型社会を政策的に形成するにあたり,効率的な再生と廃棄の配分を促す経済メカニズムの導入は不可欠である.本研究計画の目的は,私企業や公的企業がリサイクル市場で競争する混合市場を考え,循環型社会に働く市場メカニズムはどのようなものであるかを,理論モデル分析によって明らかにし,これにより,循環型社会における公的企業の望ましい介入(もしくは非介入)のあり方,生産者系私企業の拡大生産者責任のあり方,またそれらの関係について経済学的な政策含意を導くことである.
プロジェクト1年目である本年度は,上記計画に照らし合わせて分析の前提になる,循環型社会と環境経済理論の各種研究を主に行った.第一に,廃棄物市場において私企業と公的企業の混合市場が形成されるためには,公共団体が担ってきた廃棄物処理を民間にアウトソーシングすることが第一歩である.こうしたアウトソーシングの現状をデータで捉え,そのインセンティブを明らかにする研究を行った.第二に,私企業を参加させてリサイクルを政策的に促進すると,不法投棄問題が避けられなくなる.この点を考慮した場合に現れる市場構造を分析するために,自身の既存研究をさらに深める形で研究を進めた.第三に,廃棄のコントロールには,各種財の技術的な排出係数を規制する政策手段の親和性が高い.しかし,従来の環境政策手段に排出係数規制を組み合わせる研究は,あまり理論的に成されてきておらず,より一般的な環境経済学理論研究の立場からこの点について着手した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上記研究実績の概要に述べた第一から第三の研究進捗は,以下に述べるように既にある程度の論文の形としてまとまってきているため,当初の計画以上に進展しているといえる.
第一の公的企業のアウトソーシングに関する研究は,第3回「公益学+経済学」4大学合同ワークショップ(東北公益文科大学,2018/9/16)で発表された.その後,ディスカッションペーパー“Contracting Out Waste Collection Services”(研究発表参照)の形でまとめられた.
第二の不法投棄問題に関する研究は,“The curse of low-valued recycling”として国際ジャーナルに刊行予定(研究発表参照)である.
第三の排出係数規制に関する研究も,“The Equivalence of Emission Tax with Tax-Revenue Refund and Emission Intensity Regulation”(研究発表参照)としてデスカッションペーパーの形にまとめられた.

今後の研究の推進方策

混合リサイクル市場の分析の前提となる,公的企業のアウトソーシング・私企業の不法投棄・政策手段(排出係数規制)の研究が進捗したので,研究計画で述べた残る問題,拡大生産者責任を負う企業のリーダーシップの問題にも着手する.その上で,これらを総合的に勘案し,混合リサイクル市場を含んだ循環型社会の経済モデルを新たに構築し始める予定である.計画に則り,この作業には価格メカニズムをリサイクル市場に導入し,産業組織論の市場分析を乗せやすいモデルの枠組みを提示しているIno(2011)の部分均衡モデルを改良・拡張し,循環型社会における寡占競争を分析しているIno(2007)を参考にしつつ,リーダーシップに関する産業組織論の分析手法と循環型社会の経済学を統合していく.
また,公的企業のアウトソーシングと排出係数規制の研究は,論文としては速報段階であるので,引き続き必要な深化を図り進捗させていく.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] The curse of low-valued recycling2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Ino and Norimichi Matsueda
    • 雑誌名

      Journal of Regulatory Economics

      巻: 55 ページ: 282-306

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s11149-019-09378-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hold-up Problems in Contracting Out Waste Collection Services2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Ino, Norimichi Matsueda and Jun'ichi Miki
    • 雑誌名

      Discussion Paper Series, School of Economics, Kwansei Gakuin University

      巻: 186 ページ: 1-18

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Equivalence of Emission Tax with Tax-Revenue Refund and Emission Intensity Regulation2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Ino and Toshihiro Matsumura
    • 雑誌名

      Discussion Paper Series, School of Economics, Kwansei Gakuin University

      巻: 188 ページ: 1-9

    • オープンアクセス

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公開日: 2019-12-27  

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