日本のスタートアップ企業を対象に組織デザインとイノベーション成果の関係について分析を行ってきた。特に、本研究では、スタートアップ企業の組織内で重要な役割を果たす「創業チーム」の役割について分析してきた。 スタートアップ企業は、有する資源が乏しく、経験もほとんどないため、資金調達、人材確保、取引先・提携先確保などに苦労する「新規性による不利益(liability of newness)」に直面することが広く知られている。特に、研究開発型スタートアップ企業は、高い資金需要をもつ一方で外部の金融機関や貸し手との間の情報の非対称性が大きく、実際には十分な資金調達が難しく、研究開発投資からリターンを思うように得ることが難しい。そこで、リスクやコストをシェアすることを可能とする「企業、大学、研究機関などの他組織との共同研究開発を含めたパートナーシップ」が重要な戦略となるが、外部から知識を獲得する上で重要な役割を果たす組織内部の「吸収能力」を十分に有していないことが知られている。そこで、「創業者の人的資本」が企業の吸収能力を補完するため、パートナーシップ構築において重要な役割を果たすことが先行研究において示されてきた。 本研究課題では、このような背景をもとに創業者の人的資本が吸収能力としてどのように重要なのかについて明らかにしようと試みてきた。これまでの分析結果からは、スタートアップ企業が共同研究の効果を十分に活用し、イノベーション成果を効率的に達成する上で、創業者の人的資本が欠かせない役割を果たすという結果を示している。また、「家族従業員の役割」がイノベーション創出においてどのような役割を果たすのかについて分析してきた。家族従業員はスタートアップ企業が苦労する資源の希少性を補う上で重要な役割を果たし、結果として彼らの存在がイノベーション創出において正の影響を与えることが明らかになった。
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