研究課題
本研究では生活保護受給世帯の就労に対する課税と給付の効果を検討した.計画時は就労収入分布の集群(bunching)を利用した推定を予定していたが,実際の分布では制度が示唆する水準以外でも数多くの集群が存在し,当該方法の利用に適さなかった.また,計画していた市町村合併による級地変更を用いた推定についても,「被保護者調査」における地域符号の仕組みにより時点間の紐付けが不可能であると判明した.このように,当初の計画から修正を迫られたが,以下の成果を上げることができた.研究は「被保護者調査」からの全世帯をサンプルとし,生活保護制度における就労収入への基礎控除の仕組みを利用して行われた.この基礎控除の仕組みを利用して保護世帯が稼得する就労収入に対する実質的な限界税率を算定した.保護世帯の就労収入のブラケットによって限界税率は異なるが,この限界税率と保護基準額を用いることで世帯の「実効所得(virtual income)」も算定できる.研究では,これら限界税率と実効所得の変化が保護世帯の就労に与える効果を推定した.限界税率と実効所得は就労収入に依存する内生変数であるが,その対処法としては2013年7月の基礎控除制度の改定を利用した操作変数法を用いた.具体的な成果としては,①生活保護の動向ととのもに保護世帯の就業状況の実態を記述統計を用いて考察する論文(「生活保護制度と被保護者の就労実態」),②2013年の基礎控除の改訂を利用した,保護世帯の労働供給の税率(賃金率)と定額給付(実効所得)への反応を推定した論文("Transfer Benefits, Implicit Taxes, and the Earnings of Welfare Recipients: Evidence from Public Assistance Programs in Japan")を作成した.
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租税研究
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東京大学経済学研究科日本経済国際共同研究センター(CIRJE) ディスカッションペーパー・シリーズJ
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Discussion Paper F-Series, Center for International Research on the Japanese Economy, The University of Tokyo
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http://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2021/2021cf1164ab.html
http://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2021/2021cj300ab.html