研究実績の概要 |
2021年度は,前年度に実施した全国市町村財政担当課へのアンケート調査を分析した.これは各地方自治体が判断する財政調整基金残高等の適正水準を調査したものであり,(1,718市町村のうち福島県内の6町3村を除く)1,709市町村に郵送し,978市町村から回答を得たものである(回収率は57.2%). 本アンケート調査については,回答団体の構成が実際の市町村の類似団体区分を反映していること,都道府県別分布も同様に実際の市町村分布を反映していることが確認された.さらに,財政調整基金残高(標準財政規模に対する割合)の分布は,Kolmogorov-Smirnov 検定の結果,回答団体と非回答団体で有意に差がないことが確認された. 主な分析結果は以下の通りである.第1に,財政調整基金を積み立てる基準として,標準財政規模の一定割合を採用する自治体が3分の2弱程度であることが明らかになった.第2に,令和元年度決算で見た実際の財政調整基金残高(標準財政規模比)の分布の最頻値は10~20%に対して,市町村が望ましいと考える水準の最頻値も10~20%でほとんどが同水準にあることが明らかになった.第3に,新型コロナウイルス感染症拡大後の望ましい財政調整基金残高の水準は83.0%が変化なしと回答した.これは国からの新型コロナ対策交付金の継続を前提として変化なしと回答したものと推察された.第4に,地方財政健全化法施行後の財政健全化策についても調査した結果,財政健全化策は98.9%の団体で実施され,実質公債費比率が5%未満の財政状況の良い自治体では実施されていないこと,また,都市ではほぼ10 対策以上を実施していたが,町村では平均して6~7の対策しか行われておらず,都市と町村とでの違いが明らかになった.これは都市は厳しい財政状況下にあり,地方財政健全化法の下で財政健全化に積極的であったことを示している.
|