研究課題/領域番号 |
18K01648
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西山 慎一 京都大学, 経済学研究科, 教授 (20812895)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 少子高齢化 / 財政政策 / 社会保障政策 / 出生率 / 教育投資 / 動学一般均衡モデル / 世代重複モデル |
研究実績の概要 |
南カリフォルニア大学の Imrohoroglu 教授と共同で執筆している "Achieving Actuarial Balance in Social Security: Measuring the Welfare Effects on Individuals" という論文は、直近のマクロ経済・人口動態統計を取り入れる形での改訂を進めているが、まだ完成および公刊には至っていない。 上記論文の執筆と並行して、単独で "Fertility, Education, and Economic Growth" という論文を執筆し始めた。この論文は異質な家計で構成される一般均衡世代重複モデルに各家計の出産、教育投資、生前贈与などの意思決定を組み込んで、経済政策が中長期的な人口成長率、人的資本形成、経済成長などに及ぼす影響を分析している。本論文については、5月に大阪大学、8月に京都大学、10月に慶應義塾大学、12月に一橋大学で中間報告をし、貴重な意見を受け取った。 日本の少子高齢化の進行が既存の税制・社会保障制度の持続可能性に及ぼす影響の分析については、しばらく研究を中断していたが、関連データの収集加工および異質な家計からなる一般均衡世代重複モデルの構築作業を12月に再開している。 その他の活動として、9月に延世大学の Sun-Bin Kim 教授、10月に Institut Polytechnique de Paris の Jean-Baptiste Michau 教授、ソウル国立大学の Yongsung Chang 教授、11月に政策研究大学院大学の Minchung Hsu 准教授、Ponpoje Porapakkarm 准教授、ジョージア大学の Svetlana Pashchenko 准教授を招へいし、研究報告を聞くとともに意見交換を行った。また1月に米国サンディエゴで開催された米国経済学会(American Economic Association、Econometric Society など)の合同年次総会に参加し、マクロ経済学や財政金融政策に関する最新の研究動向を調査するとともに、ペンシルバニア大学の Kent Smetters 教授と意見交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、予定していた論文に加えて "Fertility, Education, and Economic Growth" という論文を執筆し始めたため。この論文は異質な家計で構成される一般均衡世代重複モデルに出産、教育投資、生前贈与などの意思決定を組み込んだ野心的なものだが、子供の数や教育投資額の意思決定の定式化および一般均衡経路の導出の部分が予想以上に難航した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在執筆を進めている "Achieving Actuarial Balance in Social Security: Measuring the Welfare Effects on Individuals" という、米国の少子高齢化が社会保障年金制度の持続可能性に及ぼす影響について分析する論文を完成させ、学術誌に投稿する。 さらに“Fertility, Education, and Economic Growth”という、子育てや教育に関する補助政策が長期的な人口成長率、人的資本形成、経済成長に及ぼす影響について分析する論文を完成させ、学術誌に投稿する。 また日本の将来人口推計を異質な家計からなる動学一般均衡・世代重複モデルに組み込み、少子高齢化の下での日本経済、主にマクロ経済と政府財政収支、の長期的な推移を予測し、同様な手法を用いて推計した米国の長期予測と比較しながら、日本の少子高齢化の特徴を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内諸業務を優先するため、また新型コロナウイルス禍の自粛要請のため9月および3月に予定していた出張を取りやめた。さらに2月に予定していた招へいが1件キャンセルとなった。
|