研究課題
本研究では、第一に、ワークライフバランスに資する政策や制度の整備が既婚女性の労働供給に与えた影響を明らかにした。小原(2019)で先行研究をサーベイした後、Kohara and Maity (2021)で、2000年代に導入が進んだ介護・育児休暇制度が、夫婦の労働時間と家事時間の不均衡を改善させたのかについてデータ検証を行った。分析により、休暇制度の導入が妻の市場労働供給を増加させた一方、夫の家事労働時間は増加したわけではなく、夫婦の時間不均衡の解消にはつながっていないことが示された。第二に、家計生産物として世帯員の健康に注目し、その決定要因を明らかにした。まず、妊婦が時間と資金を投資して産前検診を受けることで新生児の健康状態が改善すること、国の検診補助政策がこの効果を後押しすることを示した(Kohara et.al. (2019)、松島・小原(2018))。また、健康に関する家計内生産のメカニズムを整理した(阿部・稲倉・小原(2018))。2021年度は、この論文を展開し、余暇時間と消費の中身を詳細に尋ねた独自ウェブ調査に基づいて、日本家計の余暇時間と財投入の間には強い代替性はなく、時間を余暇に割くことができない人は財投入も少なくなる傾向があることを示した(阿部・稲倉・小原(2021))。さらに2021年度は、第三の疑問に答えるべく、1920年代の日本の農家の日記記録(日次パネルデータ)を用いた分析も進めた。記録をデータベース化し、天候変化と家庭内の夫婦の時間配分の決定にどのような影響を与えたかを分析しようとしたが、手書きの記録のデータベース化に予想以上の時間がかかった上、天候変動の日次記録が不完全だとわかり、時間配分をまとめて終了となった。日本型家計内配分を長期的に論じるためにも、今後は、地域コードを利用して天候変化を捕捉する等の工夫が必要だとわかった。
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日本経済研究
巻: NA ページ: 近刊
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van der Veere A., Schneider F. and Yuk-ping Lo C. eds. "Public Health in Asia during the COVID-19 Pandemic Global Health Governance, Migrant Labour, and International Health Crises"
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深尾京示編サービス産業の生産性と日本経済-JIPデータベースによる実証分析と提言
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