最終年度に実施した研究成果として3点挙げる。因子分析、分位点回帰モデルを組み合わせた検証により、学部生の成績に関しては女子学生のパフォーマンスが男子学生を上回っており、その影響は様々な要因を加味した上でも頑強である。その事実の一部は入学以前から保有する学習態度により説明できるが、STEM(自然科学系分野)においては、大学入学後の学習態度がより重要であり、パフォーマンスの性差は小さい。次に、高学歴者の水平・垂直の学歴ミスマッチのパネル分析を行い、女性の水平のミスマッチによる賃金ペナルティは男性を上回り、STEM(自然科学系分野)で大きい。最後に、高学歴者の専攻を考慮した新卒女子学生の採用比率の検証は、性別職務分離が女子採用比率に負の効果をもたらす可能性を示唆した。 本研究は、STEM分野における女性の活躍推進の潮流を汲み取り、その政策を支持するエビデンスを確認し、課題を把握することを目的として実施した。研究期間全体の成果を総括する。STEM分野を選択する女子学生は少ないものの、学生時代のパフォーマンスは良好であり、卒業後の男女間賃金格差についても縮小させる効果を持つ。また、需要(企業)側の要因では、多様性を重視する企業ほどSTEM分野における女子採用比率が高い。研究開発費を投じている企業ほど修士の女子採用比率が高い。課題として、性別職務分離を背景に女性従業員の勤続年数が長いほど新卒女性の採用比率を抑制する可能性がある。女性の水平のミスマッチの確率は文系と同等であり、賃金の低下をもたらす。このことから、今後のSTEM分野における女性の活躍推進においては、性別職務分離を改善した人材の配置を促し、本人の能力、技能に沿った就業支援が重要である。本研究は、上記以外に、国際比較研究による実証分析結果が英文ジャーナルに掲載され、当初の計画以上の成果を得た。
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