研究課題/領域番号 |
18K01655
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小川 亮 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40707999)
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研究分担者 |
木村 真 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (50419959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 回帰不連続デザイン / 自治体健全化法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自治体の財政健全化への取り組みまたはその事前アナウンスが、住民の居住地選択行動(住民移動)にどのような影響を与えるのか、という問いに対して、2000年代半ばに日本で施行された自治体財政健全化法がその自然実験(近似実験)の状況であることに着目して、自治体データを用いた回帰不連続デザインと、住民の個票データを用いた差分の差分析により検証することにある。 2018年度の研究進捗は以下のようになる。自治体データを用いた回帰不連続デザインを中心に行った。まず、自治体財政健全化法にまつわる制度内容の変遷をつぶさにサーベイした。次に、この制度改革と回帰不連続デザインという手法との間に齟齬がないかを検証した。さらに、用いる自治体ごとの住民移動データの収集・整備を行ったうえで、散布図の作成、回帰式による推計を施した。 結果、健全化法の施行により、財政健全化団体の社会増減率と転出率の平均値が、早期健全化基準を下回る自治体のそれと比べて有意に異なる結果がみられた。また、年齢階級別の人口増減率を用いて、年齢(強いて解釈すればライフステージ)によって上記の傾向に違いがあるのかを見た結果、その可能性が示唆される結果が得られた。 以上の結果をまず日本語の論文にまとめて、日本財政学会第75回大会(於:香川大学)で発表した。その後、討論者・座長および聴講者から頂いた有益なコメントを踏まえてリバイズに取り組んだ。特に、プリトリートメントの観察可能な共変量を推計式に加えたうえで再度推計を行った結果、結果の頑健性が確かめられた。それらのリバイズを反映したうえで英訳した論文をThe International Institute of Public Finance (IIPF)の2019年大会(於:グラスゴー大学)の報告論文に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自治体データを用いた回帰不連続デザインのほうは、国内の学会発表をすませることができたうえに、論文の英訳を施し、国際学会発表のための投稿にまでたどり着くことができた点が、計画より早い進捗状況にあるといえる。ただし、もうひとつの分析である、住民の個票データを用いた差分の差分析のほうは、計画していた個票データ申請が未着手の状態であるが、2019年度で速やかに実施する方針にある。
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今後の研究の推進方策 |
自治体データを用いた回帰不連続デザインのほうは、国際学会での発表後にしかるべき査読付き海外ジャーナルへ投稿する予定である。住民の個票データを用いた差分の差分析のほうは、個票データ申請を行った後、データが届き次第、データ収集・推計に取り組む予定にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた旅費の予定額については、実際にはそこまで利用されなかった。また、人件費・謝金についても研究代表者と分担者の範囲で作業が比較的収まるものが多かったため、予定額よりも少ない支出で済んだ。次年度では、個票データを用いた分析を予定しており、人件費・謝金がかかることが見込まれる。また、欧州での国際学会で発表できることになれば旅費の増加が見込まれる。
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