研究課題/領域番号 |
18K01659
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 勲 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (20453532)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 働き方改革 / 健康経営 / 長時間労働 / 女性活躍推進 / 人的資本投資 / AI |
研究実績の概要 |
本研究では、産官学連携で得られた企業や労働者のさまざまなデータを用いて「働き方改革」や「健康経営」の費用対効果などのエビデンスを導出するとともに、それらのエビデンスをもとに、今後の日本の望ましい内部労働市場のあり方を検討し、労働市場政策や企業における人事・労務管理・経営施策への含意を示すことを目指している。 初年度の研究実績として、労働者個人のパネルデータを用いて、長時間労働や過労による健康被害が生じてしまうメカニズムを行動経済学的なアプローチで検証した研究のほか、職場での上司の能力やコミュニケーションなどの職場管理の方法などによって労働者のメンタルヘルスがどのように影響を受けるかを検証した研究を進め、2本の論文を査読付き国際学術雑誌へ掲載した。いずれの研究からも、働き方改革や健康経営のあり方の制度設計を検討する上で有用なエビデンスが導出できたといえる。 このほか、2019年4月施行の働き方改革関連法による長時間労働是正の効果を既存研究の知見から整理する論文や、女性活躍推進の企業にとっての費用対効果を推計した論文、AIの利活用によって営業職の働き方がどのように変容するかを検証した論文の3本を国内学術雑誌へ掲載した。 さらに、働き方改革による長時間労働の是正の副作用として、企業における労働者への人的資本投資が減少する可能性があるのか、また、労働者自身による自己研鑽が代わりに増加しているのか、といった点を検証する研究も進めたほか、働き方と健康の関係に関するこれまでの経済学分野の研究をサーベイする研究、女性活躍推進の状況を開示することが企業業績とどのように関係するかを検証する研究、働き方改革やAIなどの新しい情報技術の活用が企業業績や働き方に与える影響を検証する研究などを進め、合計5本のディスカッションペーパーや報告書として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究期間の初年度に10本の論文を完成させ、うち2本が査読付学術雑誌に掲載した。また、論文の形にはなっていないが、企業業績と各種健康指標の関係をレセプト・検診データなどを用いて検証することを進めているほか、健康経営・健康施策と企業業績あるいは労働者の健康状態の関係を企業あるいは労働者のデータを用いて検証することに着手するなど、来年度以降の実績につながりうる準備も着実に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も研究目的に沿った検証を実施するための各種データを収集・作成するために、企業や政府、調査研究機関と連携を強めていく。また、研究論文のクオリティ向上を目指し、内外の専門家への意見聴取を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度にデータ整理等の作業をリサーチアシスタントを雇って実施する予定だったが、その作業が必要なデータの入手が来年度にずれ込んだため、来年度に支出する。
|